シューベルト :ピアノ・ソナタ 第9番 第1楽章 D 575 Op.147

Schubert, Franz:Sonate für Klavier Nr.9  Allegro, ma non troppo

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:7分30秒
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解説 (1)

解説 : 髙松 佑介 (837文字)

更新日:2019年4月28日
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アレグロ・マ・ノン・トロッポ、ロ長調、4分の4拍子

本楽章には、ソナタ形式の枠組みを取りつつ、それを転調や複数の主題の導入によってしようとする試みが見て取れる。

冒頭では、主調であるロ長調の三和音が分散和音としてユニゾンで提示され、第3小節で突然に嬰ハ短調の属七が現れる。この主題が再度提示されると、総休止を挟んでハ長調へと逸脱し、ト長調で新たな主題が提示される(第15小節)。この第2主題は、スタッカートの付いた第1主題とは対照的に、レガートで流れるように奏される。第2主題は最後の3小節でホ長調へと転じ、穏やかな第3主題がホ長調で提示される(第30小節)。ここまで、ロ長調―ト長調―ホ長調と三度ずつ下へと進む調進行となっている。この第3主題は嬰ヘ長調へと転じ、第42小節で第4主題が現れて嬰へ長調のまま提示部を閉じる。このように、提示部はロ長調の主題で始まり属調の主題で閉じるため、大枠はソナタ形式と同じだが、その間に更なる2つの主題領域が挟まれている点に注目したい。後年のシューベルトは、提示部の主調と属調との間に三度調領域を1つ挟むことで、通例のソナタ形式が持つ主調―属調の緊張感を打ち崩したことで知られる(詳細はピアノ・ソナタ第21番D 960を参照)。本楽章のソナタ形式には、まさにこの特徴が見て取れる。

展開部は二部分に分かれる。前半は第1主題の動機を繰り返すことで、三度調関係でロ短調からニ長調、ヘ長調、変イ長調へと転じる。そして変ホ長調を経て、ロ長調で第2主題に由来する後半部が現れる。再現部を待たず、展開部後半で主調が回帰するのは、通例のソナタ形式からすると稀なケースだが、これには理由がある。本楽章では、すでにピアノ・ソナタ第2番D 279第3番D 459第4番D 537で試みられたように、再現部が下属調のホ長調で現れるのである。そして提示部での調関係を保ちつつ、第2主題がハ長調、第3主題がイ長調で再現され、第4主題が主調のロ長調で回帰して幕となる。

執筆者: 髙松 佑介