プロコフィエフ :小歌
Prokof'ev, Sergei Sergeevich:Little Song
解説 : 長瀬 賢弘 (335文字)
プロコフィエフが最初の師、グリエールと出会ったのは1902年、11歳の時のことである。この師は、強い個性を持っていたプロコフィエフ少年の心をすぐさま掴み、和声や形式や管弦楽法の基礎を教えていった。そうして得た知識を用いて、プロコフィエフはやがて、「小歌」と呼んだ小さな作品を規則的に書き続ける習慣を持つようになる。それは期間にしてほぼ6年、その数は60曲以上に及んだ。少年期から青年期にかけて続けたこの習慣は、未来の巨匠の音楽的実験場であったり、時には日記のようなものであったりしたのかもしれない。未来の巨匠が抱く、伝統的なフォーマットの中に斬新さを見出そうとする姿勢や、整った響きからふいに大胆に逸脱する彼の表現語法は、この頃からしっかり芽吹いていたように感じられる。