チャイコフスキー :18の小品 Op.72
Tchaikovsky, Pytr Il'ich:18 Morceaux Op.72
総説 : 舘 亜里沙 (832文字)
チャイコフスキー(1840‐93)が最晩年の1893年に遺したピアノ作品であり、彼の有名な交響曲第6番《悲愴》の創作期間中に書かれました。完成後、作品は出版商であり友人でもあったP. ユルゲンソン(1836-1903)のもとに持ち込まれています。「小品」という名のもと、ほとんどの楽曲が小規模な音楽作品によく用いられるA-B-A´の三部形式で書かれていますが、長さは5分前後とある程度のボリュームがあり、中には演奏者にかなりの技術を求めるものもあります。
三部形式のAとBの部分は楽譜上でも明確に分けられており、聴き手の耳にもはっきり感じられるため、それぞれの楽曲におけるコントラストが聴きどころです。また、A´部分がA部分とどのように変わっているのかも興味深い点で、例えば第17番<遠い昔>では、A´部分がA部分の美しい変奏となります。終曲の第18番<トレパークへの誘い>のみ三部形式をとらず、冒頭のモティーフが次々と華やかさを増してゆきます。
楽曲のタイトルは、いわゆる器楽曲のジャンル名を指すもの(第1番<即興曲>など)と、パロディー的なもの(第9番<少しシューマン風に>など)と、舞曲の名前がつけられたもの(第7番<演奏会用ポロネーズ>など)と、その他の具体的なテーマを持ったもの(第8番<対話>など)の4パターンに分けることが出来ます。こうしたタイトルの付け方は、シューマンの組曲《謝肉祭》を彷彿とさせますが、《謝肉祭》のように作品全体を統一する構成要素があるわけではなく、むしろ18の独立した世界観を持つピアノ曲が集まっています。
チャイコフスキーはこの後に完成する交響曲第6番《悲愴》では、「人生」や「死」といった非常に切迫したテーマに挑んでいた一方で、その直前の時期にはバレエ《くるみ割り人形》やオペラ《イオランタ》といった、ロマンティックなおとぎ話のための作品を書いていました。この《18の小品》には、そうした彼の創作の両極が巧みに入り混じっています。
即興曲 Op.72-1
調:ヘ短調 総演奏時間:3分40秒
動画(1)
解説(0)
楽譜(0)
子守歌 Op.72-2
調:変イ長調 総演奏時間:5分30秒
穏やかなおしかり Op.72-3
調:嬰ハ短調 総演奏時間:2分30秒
楽譜(2)
性格的舞曲 Op.72-4
調:ニ長調 総演奏時間:3分30秒
瞑想曲 Op.72-5
調:ニ長調 総演奏時間:4分20秒
動画(6)
踊りのためのマズルカ Op.72-6
調:変ロ長調 総演奏時間:3分10秒
演奏会用ポロネーズ Op.72-7
調:変ホ長調 総演奏時間:5分20秒
対話 Op.72-8
調:ロ長調 総演奏時間:3分30秒
少しシューマン風に Op.72-9
調:変ニ長調 総演奏時間:2分30秒
幻想的スケルツォ Op.72-10
調:変ホ短調 総演奏時間:6分40秒
ヴァルス・ブルエッテ Op.72-11
調:変ホ長調 総演奏時間:3分30秒
いたずら女の子 Op.72-12
調:ホ長調 総演奏時間:1分50秒
村のこだま Op.72-13
調:変ホ長調 総演奏時間:2分20秒
哀歌 Op.72-14
調:変ニ長調 総演奏時間:6分30秒
少しショパン風に Op.72-15
調:嬰ハ短調 総演奏時間:2分50秒
5拍子のワルツ Op.72-16
調:ニ長調 総演奏時間:1分50秒
動画(2)
遠い昔 Op.72-17
調:変ホ長調 総演奏時間:4分40秒
踊りの情景(トレパークへの誘い) Op.72-18
調:ハ長調 総演奏時間:3分50秒
18の小品 5. 瞑想曲
18の小品 瞑想曲
瞑想曲
18の小品 7. 演奏会用ポロネーズ
18の小品 16. 5拍子のワルツ
18の小品 14. 哀歌
18の小品 1. 即興曲 ヘ短調
18の小品 17. 遠い昔
18の小品 15. 少しショパン風に
18の小品 4. 性格的舞曲
18の小品 18. 踊りの情景(トレパークへの誘い)
18の小品 6. 踊りのためのマズルカ
18の小品 2. 子守歌
楽譜 【ミュッセ】Peters 編集・校訂:Weitzmann, Fritz 掲載楽譜:Tschaikowsky ausgewählte Klavierwerke Band III