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バッハ :アプリカーティオ BWV 994 ハ長調

Bach, Johann Sebastian:Applicatio C-Dur BWV 994

作品概要

作曲年:1720年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★
総演奏時間:1分00秒

解説 (1)

執筆者 : 朝山 奈津子 (660文字)

更新日:2008年6月1日
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ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帖》の最初に書き込まれた楽曲。運指のための数字が入念に付けられている。

次男C. P. E. バッハは、父の大バッハが親指を手の下にくぐらせて手のポジション移動をするような新しい運指を用いたことを誇らしげに伝えている(『クラヴィーア奏法試論』第1巻)。17世紀の伝統的な奏法では、主に2本一組でほんの少しずつ鍵盤の上を移動していくような手の使い方がなされた。またそれは4本の「指」が中心で、「親指」(西洋の諸原語ではしばしば「指」とは別の単語が与えられている)はごく補助的にのみ使われた。このことは、運指練習曲の冒頭、単純な上行につけられている「3-4-3-4」の指示からもよく判る。つまり、バッハはこの練習曲ではまだ伝統的な運指を息子に教えようとしている。親指を使った手のポジション換えは、複雑な調、つまり黒鍵を多用する曲や、臨時記号の多い楽曲に限定的に使われたのかも知れない。

いっけん古くさく不便に見える運指であっても、ひとまずその指示に従ってみると、バッハの想定したアクセントや楽句の切れ目が明確になる。2本一組の奏法は、オルガンやチェンバロなど音量の変えられない、アーティキュレーションが音楽表現のすべてであるような楽器では合理的な方法である。現代のピアノの重く幅広い鍵盤にはそぐわないし、こうした単純な楽曲ではどのような指を用いても結果に大きな差はないということもできる。が、これらの運指の指示は、バッハの時代の響きを技術的に伝えてくれる貴重な資料として見るべきだろう。

執筆者: 朝山 奈津子
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