作品概要
作曲年:1720年
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:1分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : 朝山 奈津子
(660 文字)
更新日:2008年6月1日
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執筆者 : 朝山 奈津子 (660 文字)
《ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帖》の最初に書き込まれた楽曲。運指のための数字が入念に付けられている。
次男C. P. E. バッハは、父の大バッハが親指を手の下にくぐらせて手のポジション移動をするような新しい運指を用いたことを誇らしげに伝えている(『クラヴィーア奏法試論』第1巻)。17世紀の伝統的な奏法では、主に2本一組でほんの少しずつ鍵盤の上を移動していくような手の使い方がなされた。またそれは4本の「指」が中心で、「親指」(西洋の諸原語ではしばしば「指」とは別の単語が与えられている)はごく補助的にのみ使われた。このことは、運指練習曲の冒頭、単純な上行につけられている「3-4-3-4」の指示からもよく判る。つまり、バッハはこの練習曲ではまだ伝統的な運指を息子に教えようとしている。親指を使った手のポジション換えは、複雑な調、つまり黒鍵を多用する曲や、臨時記号の多い楽曲に限定的に使われたのかも知れない。
いっけん古くさく不便に見える運指であっても、ひとまずその指示に従ってみると、バッハの想定したアクセントや楽句の切れ目が明確になる。2本一組の奏法は、オルガンやチェンバロなど音量の変えられない、アーティキュレーションが音楽表現のすべてであるような楽器では合理的な方法である。現代のピアノの重く幅広い鍵盤にはそぐわないし、こうした単純な楽曲ではどのような指を用いても結果に大きな差はないということもできる。が、これらの運指の指示は、バッハの時代の響きを技術的に伝えてくれる貴重な資料として見るべきだろう。
演奏のヒント : 大井 和郎
(442 文字)
更新日:2023年10月30日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (442 文字)
8小節の短い曲ですが、2小節ずつに分けてしまうと大変解りやすくなります。1~2小節間、上行形のC-durの音階があり、左手は3度の和音が下行します。3~4小節間、左手と右手が入れ替わり、左手が上行形の音階で、右手が下行形の和音になります。G-durに転調したと考えても良いですし、単なる借用和音と考えても構いませんが、この3~4小節間はG-durの要素があります。
変わって5~6小節間、今度は右手に下行形の音階、左手に上行形の和音になり、この2小節間はa-mollとします。7小節目、左右の手ともに下行形音階を辿り、F-durの要素があります。8小節目、カデンツ(終止形)を迎え、C-durに戻ります。
これらの事実から、左右の手が交互に入れ替わり、お互いに演奏した素材をバトンタッチします。それを把握した上で、ダイナミックを決めていきます。2小節毎に音量や音色を変えてみて下さい。
なお、繰り返すときは、別の声部を聴かせたり、音色や音量に変化を付け、1回目と同じ事をしないようにします。
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