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バッハ : フゲッタ ハ短調 BWV 961

Bach, Johann Sebastian : Fughetta c-moll BWV 961

作品概要

楽曲ID:2268
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:フーガ
総演奏時間:2分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

執筆者 : 朝山 奈津子 (562 文字)

更新日:2008年6月1日
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伝承経路が曖昧で疑作とも真作とも議論しがたいが、音楽内容からはJ. S. バッハの作品である可能性が高い。

全体は3部に分かれる。主題提示部は、2声が完全な主題を提示したのち、間句を通じて第10-11小節で平行調のEs-Durへと終止する。中間部は主題の前半を連綿と連ね、やがて16分音符でこれを装飾しながらB-Dur、f-Mollへたどり着く。第18-19小節にf-Mollの完全終止が起こり、これがフーガの折り返し点となる。以後、ふたたび装飾音と16分音符でカンタービレな雰囲気を増し、最終の3小節ではとうとう左手にもこの16分音符動機が現れる。

簡明な構成ではあるが、3連の8分音符、6連の16分音符と4分音符+8分音符の3種のリズムを巧みに組み合わせ、表情豊かなフーガとなっている。

なお、このフーガを伝える筆写資料のひとつに、モーツァルトベートーヴェンの有力なパトロンとなったカール・リヒノフスキー公爵への献辞をもつものがある。これには他に《インヴェンション》と《シンフォニア》が収められている。公爵がゲッティンゲン大学の法学生であった時代に作成されたと考えられる。当時のゲッティンゲン大学には、バッハ研究者であるJ. N. フォルケルが教鞭を執っており、公爵はフォルケルを通じてバッハへの造詣を深め、作品を収集した。

執筆者: 朝山 奈津子

演奏のヒント : 大井 和郎 (674 文字)

更新日:2023年11月20日
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どのくらいのテンポが適切なのかはわかりませんが、16分音符やトリルを見ると、極端に速い曲でもなく、結果、厳かに演奏される事が多いかもしれません。実際多くの動画はわりとゆったりしたテンポで演奏しています。テーマ(主題)は、1小節目から始まり4小節目の1拍目Esまでとします。

このフーガの陥りやすい傾向としては、ラインがとても硬く聴こえてしまうことにあり、その原因は、ラインの強弱を平坦に弾いてしまうことです。

ゆったりしたテンポであれば尚更それを感じずにいられません。

そこでテーマをシェープ(形取る)する事から始めて見ましょう。筆者の独断にはなりますが、1~4小節間で、ピークポイントは2小節目の3~4拍間だと思います。そこから徐々にディミヌエンドをかけていくとスムーズに流れます。

問題は1小節目の上行形と下行形をどう処理するかです。2つの考え方があります。

1つ目の考え方として、このテーマを2つに分けてみるとします。そうすると、1つ目は、1小節目1拍目から始まり、2小節目1拍目の最後の音であるCまでとします。ここで一区切り付けます。この場合、1小節目のAsを1つ目のピークとしてそこから2小節目のCまでディミヌエンドをかけます。

そして新たに、2小節目2拍目から少し大きめに、メゾフォルテ位の音量を与え、徐々に下げて、4小節目のEsがpになるようにします。

もう1つの考え方としては、このテーマを2つに分けずに1つとしてまとめてしまい、2小節目の3~4拍間をゴールとして1小節目から徐々に、上行下行にかかわらず、音量を上げて行くという考え方が出来ます。

執筆者: 大井 和郎