作品概要
作曲年:1709年
出版年:1843年
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:フーガ
総演奏時間:4分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : 朝山 奈津子
(263 文字)
更新日:2007年10月1日
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執筆者 : 朝山 奈津子 (263 文字)
2声のカノンで始まり、13小節(ほぼ見開き2ページ)に渡る華麗なカデンツァに終わる作品。主題は前半が八分音符、後半が坦々と進む十六分音符から成り、全体は主題から導かれる動機によって展開される。調的な冒険が随所に見られ、とくに終結部では模続進行によって五度圏を一巡する。
この曲は、現在では疑作とされている。その根拠は、対位法や転調のぎこちなさ、演奏不可能なペダル声部、いささか唐突な終結部の走句など、様式上の判断による。しかし、非常に多くの筆写譜で伝えられており、バッハに近い場所で成立し、実践の中で伝承されたことは間違いない。
演奏のヒント : 大井 和郎
(523 文字)
更新日:2023年11月20日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (523 文字)
この曲が偽作か否かはともかくとして、バッハらしいフーガであることは間違い無いのですが、この曲の問題点は最後のカデンツにあります。カデンツは67小節目から始まり、82小節まで続きます。このカデンツが、小節線無しで書かれていれば、もっと自由に崩すことができますし、それなりに即興的に演奏できますので、より簡単に弾けるかもしれません。
ただし、このカデンツは完全に4/4拍子で書かれており、それはある種の呪縛でもあり、「拍を認識しなければならない」という決まりの上でのカデンツと、少なくとも演奏者はこの楽譜を見てそう感じると思います。
それだけではありません。67小節目から79小節目までは同じ波形が連続して出てきます。つまり、1拍目から下行し、3拍目から上行し、4拍目の裏拍で再び下行するという素材で、これが延々と続いてしまいます。
奏者は各小節の調性を把握し、少なくとも、その調によって、カラーや音量を変えていくことが演奏者の考えなければならないところと考えます。くれぐれも、この67~79小節間を同じ強弱で、あるいは同じ音量で弾かないようにします。その上で、適度な即興的要素も取り入れ、調によってテンポを適度に変えていくくらいの演出があっても良いです。