作品概要
出版年:1904年
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:組曲
総演奏時間:12分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
執筆者 : 朝山 奈津子
(1321 文字)
更新日:2008年4月1日
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執筆者 : 朝山 奈津子 (1321 文字)
旧バッハ全集には拾遺されず、新全集においても「他者作品の編曲」と注釈された作品。唯一の資料はバッハ存命中の1743年という日付を持つとはいえ、筆写者不明のものである。が、様式の上からはバッハの初期作品としての特徴をよく備えており、真作である可能性は高い。
最初の楽章はフランス式序曲、すなわち緩急緩の3つのセクションに分かれている。第1セクションは山形の動き、すなわち直線的で華麗な上行音型と付点による緩やかな下行が繰り返される。第2セクションは逆に谷型の軽快な動機をいくつも連ねてフーガ主題としている。最後の緩徐部分は10小節と短いが、第1セクションの直線上行の装飾を排除して落ち着きのある締めくくりとしている。
この楽章のおもしろさは、調の推移にある。中間のフーガ部分では、g-Mollから始まってB-Dur(第38小節)、F-Dur(第46小節)、d-Moll(第57小節)、Es-Dur(第68小節)を通り、ここからなんとフラット6つのGes-Dur(第76小節)へ進む。転調の勢いはなお収まらず、遂にはフラット7つのas-Moll(第84小節)に到達する。ただし、このあたりの調は長く保持されず、まもなくEs-Durへ戻り(第90小節)、やがてg-Moll(第104小節)へと回帰して安定する。これらの転調はV度圏を利用して推移するものである。フーガ部分は下行の模続進行一辺倒で動機労作はやや退屈であるが、それだけに一層、こうした調の色合いの豊かさと変化が楽しめるだろう。
第2楽章は堂々たるアリア。装飾音がすべて書き出されている。前半はあくまで穏やかに進むが、反復記号の後で急に下属短調c-Mollへ転じる。ここから主調へ戻る際、第13小節第1拍のフェルマータ付き和音、および第14小節での偽終止は、このアリアの表出的な効果をさらに高めている。
第3楽章は〈ロンドによるガヴォット〉というタイトルを持つ。この曲の中で扱われるのは、第2小節第2拍までの山形の舞曲リズムによる動機と、いわゆる「溜息」動機による順次的な下行、および最初のクプレで登場した四分音符と八分休符を含む動機である。短く単純な形式のロンドだが、動機の転回をよくこなしている。
続くブレでは、ガヴォットの各動機が再び用いられる。溜息動機は反復記号以降にようやく現れるが、全体にこの2曲の関連は明確である。
3つのメヌエットのうち、最初の2曲は転回関係にある。つまり、メヌエットIで右手にあったものがメヌエットIIで左手に、また左にあったものは右へ移される。メヌエットIIIは対位法からは自由になるが、関連する動機が扱われている。メヌエットIIとIIIはメヌエットIをダ・カーポするよう指示があり、これを守るとロンドによるメヌエットが完成する。
終楽章はジーグで、フーガになっている。ただし主題はわずか半小節の差で模倣されるため、緊密なテクスチュアが生まれる。また、付点と同音反復を組み合わせた8分の6の主題は、鍵盤楽器で演奏するとではややしつこい印象を与えるが、おそらく落ち着きのあるテンポを選ぶことで解決されるだろう。なお、ジーグに付点リズムを用いるのはフランスの様式である。
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