作品概要
解説 (2)
解説 : 今関 汐里
(759 文字)
更新日:2019年8月7日
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解説 : 今関 汐里 (759 文字)
ハ長調。4分の4拍子、Allegro。
1830年11月作曲。ライプツィヒ、ロンドン、パリで1833年に第2番と共に出版。
ワルシャワのショパン博物館に所蔵されている自筆譜(M/190, M/191)には、第1番と第2番の練習曲にそれぞれ、「練習曲(エグゼルシス)1」、「練習曲(エグゼルシス)2」と記載されており、これらの2作品が一組のものとして意図されたことが判る。
幅広い音域でのアルペッジョの習得を目的としている。アルペッジョを主たる練習課題とした作品は、モシェレスのOp. 70, no. 11やクラーマーのニ短調Op. 30, no. 18などの先人たちの練習曲集にもみられることから、ショパンがこれらの作曲家の練習曲集から影響を受けていたことがわかる。しかしながら、この作品は、より多くをヨハン・ゼバスティアン・バッハに担っている。本作がハ長調で、和声の変化を伴いながらも楽曲を支配する単一の音型は、バッハの《平均律クラヴィーア曲集》第1巻のハ長調の前奏曲からインスピレーションを受けている。
ショパンの弟子のシュトライヒャーによれば、ショパンはこの練習曲について「手も広がり、ヴァイオリンの弓で弾くような和音の効果」を得ることができると語ったという。この言葉が示すように、この作品では、ピアノの4オクターヴを越える音域を端から端へと右手の分散和音が駆け抜けるため、ヴァイオリン奏者が一度のボウイングで、低音から高音までを一気に軽々と演奏するかのような印象を受ける。
演奏の際には、右手の拡張と伸縮が課題となるのと同時に、右手上腕(肘、手首など)の柔軟性が求められる。加えて、低音域から高音域、またその逆へと進行する分散和音を無理なく演奏できるようになるためには、上半身の安定(体幹)を意識することも重要となろう。
演奏のヒント : 大井 和郎
(2272 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (2272 文字)
第1番 ハ長調 最初にお伝えしておきますが、このエチュードが上手く弾けなくても全く落ち込む必要はありません。ショパンのエチュードは人によって得意不得意が異なります。例えば、こんなに速い10-1は今まで聴いたことがないという位、素晴らしい10-1を演奏する奏者が、10-5になると全く歯が立たないという信じられないケースもあるのです。またその逆もあります。10-2が弾けても25-11が弾けなかったりと、とにかくショパンエチュードの場合、全曲レコーディングをするような強 者もいますが、多くのピアニスト達はこの中で必ず得手不得手があります。ちなみに筆者はこれを弾いたことはありませんが、恐らく不得意であると思います。 このエチュードを弾くにあたり、大きな手を持っている人が有利であることは間違い無いと思います。詰まるところ、例えば1小節目を例に取ってみると、C G C Eという4つの音に対して、1245という指が振り分けられ、1は問題が無いのですが、245がどれだけ確実に伴盤を捕らえているかという事が重要で、例えばこの4つの音を、C1 G2 C4 E5 C4 G2 C1 G2 C4 E5 C4 G2というふうに、10度以内で上行したり下行したり、行ったり来たりしてみて下さい。単純な話として、それが弾ければあとはオクターブ上に行ったり下に行ったりするだけの話です。ミスタッチが起こる音はどの指かを見つけて下さい。 例えば1拍目だけを弾けば弾けるのに(CGCE)、次のCGCEに行くと弾けなくなるのはまた別の問題になってきます。基本はこの4つの音になります。そして一見、4つの音は問題なく弾けているように思えても、実はその中で弱い指があれば、スピードを上げたとき、その指が鳴らなかったり、ミスが起こったりします。 このエチュードはしかしながら1-2小節目が弾ければ他も弾けるという事にはなりません。これは曲中に書かれてある数多くのパターンを1つ1つ解決して行くしか方法がありません。例えば30小節目や32小節目は多くの学習者が悲鳴を上げる小節です。筆者がこれを弾かなければならないとき、もしかしたらこれらのような小節は左手を足すかもしれません。筆者の5の指は極端に短いため、このような方法でしか弾けないかもしれません。 例えば、1-2小節間だけを丹念に練習し、2-3日で弾けるようになり、確かな指の感触を得られ、「この曲は割と自分は得意かもしれない」と感じたら是非勉強を続ければ良いでしょう。 これより、このエチュードの音楽的な奏法をお話しします。分散された和音のみで1-2小節分かかる曲は珍しくありません。例えばバッハ平均律の1巻の1番のプレリュードです。構成は似ていますね。このような曲に遭遇したらまず全部の和音を分散せずに1つの和音で弾いてみると良いでしょう。そうすると1つの和音から次の和音への時間がかなり短縮され、和音同士の進行や解決がとてもよく分かります。 コツとしては、この曲の場合、8小節で一区切りと考えます。この8小節間にいくつの和音がくるのかはそれぞれのユニットによって異なります。最初の1-8小節間を例にとりましょう。 1-2小節間はCEG、3小節目がFAC、4小節目がFis A C E、5小節目がGBD、6小節目がD Fis AC、7小節目はバスのGがペダルポイントとなっていますので、借用和音と考え、その上で、D F As C、8小節目が D F G H になります。例えば、5小節目は、4小節目のテンションであるFisがGに解決されるとも考えられますので、このGは弱いかもしれません。また7小節目のAsは8小節目でGに、CはHにそれぞれ解決されると考えたとき、7小節目よりも8小節目のほうが音量は小さい事がわかりますね。これはただ単なる例に過ぎません。色々な考え方があると思いますので、最終的には奏者に委ねられるのですが、奏者はこれらの和声進行を繊細に考え、決してのっぺらぼうのような演奏にならないように注意します。 また、バスの動きにも注目します。17小節目から24小節目までをご覧下さい。バスはここでAですが、その先は、H A Gis A G F E という進行ですね。そうするとこの8小節間でゴールは21小節のFでここが最もテンションの高まるところです。続いてそのFは、次の小節でEに解決されますので、23-24小節間は、21-22小節間よりも弱くするといった具合です。 その上で、和音のカラーも考えます。例えば25小節目の和音はとてもショッキングです。突然別世界に行くような柔らかな和音ですね。このような和音はソフトペダルなどを踏んで、色を変えます。 そしてさらに、前述した8小節単位で進む事を鑑みたとき、1つの8小節間ともう1つの8小節間では、ストレートに進みたいところと、少し時間が欲しいところがあるはずです。例えば、8小節目は最初の8小節間の最後ですが、9小節目に入ることはそれほど待たなくても良いのではないでしょうか?しかしながら、16小節目は、文章の「。」のように、1つのセンテンスの最後のような感じを受けないでしょうか?そうすると次のA-mollのセクションが全く新しいストーリーが始まるようなセクションですので、少し時間をとってから17小節目に入ります。そうするととても聴きやすく、構成がはっきりしてきます。必要な箇所には躊躇無くブレスを取って頂いて構わないと思います。
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