1927年、パリの自宅でサロンを開いていたジャンヌ・デュボスト[註:銀行家アンドレ・ベナールの娘。アール・ヌーヴォーの代表作として知られるエクトル・ギマールのパリ地下鉄入口のデザインは、ベナールの依頼により実現した。]のために、当時サロンに出入りしていたオーリックら10人の作曲家[註:ラヴェル、ピエール=オクターヴ・フェルー、ジャック・イベール、アレクシ・ロラン=マニュエル、マルセル・ドラノワ、ルーセル、ミヨー、プーランク、オーリック、フロラン・シュミット。各作曲家が提供した曲の順序も上の順序と同じ。]がそれぞれ1曲を提供し、バレエ音楽《ジャンヌの扇》として彼女に献呈した。
1927年6月16日、デュボストのサロンで行われた初演では、彼女の親友マリー・ローランサンが衣裳を手がけ、バレエ・リュスで活躍したロジェ・デゾルミエールが指揮した[註:公開初演は1929年3月4日、パリのオペラ座で行われた。]。
9曲目のオーリックの〈ロンドー〉は、8分の5拍子によるルフラン(主要楽想)と3つのクープレ(副次楽想)からなる。4分の3拍子による最後のクープレでは若干テンポが落ち、緩やかなワルツとなる。オーケストラのスコアと同時に刊行されたピアノ・リダクションは、曲によって独奏と連弾のいずれかに分かれているが、〈ロンドー〉は独奏である。