シューベルトはエステルハージ伯爵家の2人の娘にピアノを教えるため、1818年と24年の2回、ハンガリーのジェリズに赴いた。その際、教育かつ娯楽のために多く作曲されたのが、ピアノ連弾曲である。
1824年7月に作曲されたこの《大二重奏曲(グラン・デュオ)》と呼ばれる4手ピアノ・ソナタもそのひとつであるが、気楽な連弾曲というよりむしろ、交響的な構成をもつ4楽章制の大作品である。当時は連弾曲も公開演奏会で取り上げられる機会が増えていたため、そうした場での演奏も視野に入れていたかもしれない。
いずれにせよ、この作品の規模の大きさと雄大さのために、R・シューマン(1810-56)は交響的な作品であると評価し、実際、シューベルト作品に親しんでいたヴァイオリニストのJ・ヨアヒム(1831-1907)は、1855年にこの作品をオーケストラ編曲している。