作品概要
作曲年:1984年
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
著作権:保護期間中
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(895 文字)
更新日:2017年4月25日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (895 文字)
16. しかられたあと とても音楽的な要素を必要とする曲です。メトロノームのように正確に弾いてしまうと機械的に聞こえてしまう曲です。曲中多く出てくる連打音も気をつけなければなりません。 それでは見ていきましょう。この曲は12小節からできている曲ですが、左手を見ると2分音符が4つで1つのグループを作っていますね。つまりは2小節で1つのフレーズと考えます。そしてこの2分音符4つで1つのグループは、必ずDから始まっています。そしてB、A、Cisのいずれかで終わります(最後は例外です)。曲中なんとなく不安定で寂しい様子がするのは、この2分音符のグループの終わり方が、精神的に安らぐ音を選んでいませんね。例えば2小節目の左手の最後の2分音符はBで終わっています。これがDで終わってくれたら少しは安らぐのですが、Bで終わるとどうしても不安定さが残りますね。学習者はそれら作曲家の意図を感じとり、自ら不安に満ちて演奏をして下さい。 学習者は各フレーズの最後の音に決してアクセントを付けてはいけません。必ず消えるように終わります。 そしてここからは筆者の個人的な意見となってしまうのですが、筆者はこの曲に多少のルバートがあって良いと考えています。例えばクライマックスの8小節目は、かなりテンポが落ちても構わないのではないかと思っています。ブローディングや少しテンポをゆっくりする弾き方は、8小節目の11-12小節間に用いても良いと思います。 バランスの問題も考えてみましょう。左手の2分音符は当然ですが、1拍目と3拍目を刻みます。そうすると、非常に縦割りな音楽に聞こえてしまいます。つまりは横に流れなくなります。この曲は縦割りで拍を感じる曲ではなく、横に流れる曲だと思いますので、拍を刻む左手は要注意になります。演奏するときは、左手の音量をできる限り下げ、強拍のアタックを減少させます。 右手は音質をハッキリとさせ、歌のように歌います。注意するのは5小節目から始まる連打音で、この連打音が音楽を固く聞こえさせる要因になりうる場合があります。連打音は音量を落とし、スムーズに聴かせて下さい。