作品概要
初出版社:Litolff
献呈先:J. P. Gotthard
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:練習曲
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
総説 : 原 晶穂
(180 文字)
更新日:2018年3月12日
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総説 : 原 晶穂 (180 文字)
バイエル 106曲 ドイツの作曲家、ピアニスト、音楽教育家のフェルディナント・バイエル(1806-1863)の作品。 日本では、1889(明治13)年、アメリカ人音楽教育家L.W.メーソン(1818-1896)によって音楽取調掛(のちの東京音楽学校、現東京藝術大学音楽学部の前身)のピアノ教材として採用されて以来、ピアノ学習者にとって馴染み深い曲集である。
解説 : 槇平 由香
(2738 文字)
更新日:2019年3月9日
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解説 : 槇平 由香 (2738 文字)
19世紀のドイツに生まれたピアニストで作曲家・編曲家だったフェルディナント・バイエル Ferdinand Beyer(1806~63)によって、1850年ごろにマインツのショット社より出版された、通称『バイエル』と呼ばれるピアノ教材のこと。ドイツ語だけでなく、フランス語、英語、スペイン語、ロシア語、チェコ語、日本語などに翻訳され出版されている。とくに日本での受容は世界でも類を見ないほどに大きく、現在でも国内の楽譜出版各社より『バイエル』またはその改訂版、副教材などが多数出版されている。
バイエルが活躍した19世紀のヨーロッパは、それまで上流階級のものだった音楽が急速に市民階級にまで広がっており、ピアノの普及も手伝って、ピアノ演奏者人口が急増していた。またピアノを習い始める初級者たちが大量に生まれたため、このことが、多くの作曲家が初級者向けのピアノ教則本を作るきっかけともなった。そんななか、バイエルは当時、自作の小品のほか、流行りのオペラ作品を編曲したものなどを多数出版する人気作曲家の一人だった。記録によると、バイエルがマインツで初めて楽譜を出版したのが1838年で、初級者もしくは子どもたちのためにドイツの歌や人気オペラ作品の編曲を書き始めたのは、それからしばらく経った1846年ごろのことだった。それまでも演奏の易しい曲はあったのかもしれないが、楽譜のタイトルで明確に「子どものため」や「若い(青少年)ピアニストのため」、といった言葉のある楽譜を書くようになる。そして、『バイエル』が出版される1850年ごろまで、こういった作品が次々と出版されているところを見ると、すでに子どもや初級者のために『バイエル』を書く構想が、バイエル自身のなかにあったのだろうと推測できる。
当時の出版カタログによると、『バイエル』のタイトルは『Vorschule im Klavierspiel für Schüler des zartesten Alters, enth. 106 zweihändige, dreihändige u. vierhändige Uebungsstücke, Vorübungen, Fingerübungen und Anfangsgründe der Musik (Ecole préliminaire de Piano). op. 101 最も幼い年齢の学習者たち向けのピアノ奏法入門書 ~106曲の2手、3手、4手の練習曲と、予備練習、指練習そして音楽の基礎[楽典]を含む』(Hofmeister: Musikalisch-literarischer Monatsbericht. Band: Januer 1851、13ページ/オーストリア国立図書館データベースより)と発表されており、楽譜最後にある付録を含めると、実に多くの練習曲で構成されている。楽譜を改めて見てみると、段階を踏んで徐々に楽譜への知識や演奏レベルを上げて行けるよう、さままざまな配慮がなされていることが分かる。
第64番までを前半部、第65番以降を後半部として分けると、前半は5音のみで構成された練習曲、後半で指くぐりが初めて登場し6度以上の練習曲が並ぶ。頭から順に追っていくと、まずは楽譜を読むために必要な音楽の基礎である楽典を学ぶ。次に右手だけ・左手だけで弾く予備練習をし両手奏の予備練習に移るが、手がまるで鏡に映したような動き(両手とも同じ指を動かす)で弾く練習のあと両手でオクターヴ違いの同じ音を弾く練習に入る。人間の生理機能に逆らうような手の動きを身につけるこの段階を踏んだ準備運動で、ここから始まる本格的な演奏へと支障なく移行できるようになっている。徐々に演奏に求められる技術が上がり、第二部に入ると、初級者には難しいと言われている指くぐりが一番最初の課題として与えられると、音階、複雑なリズム、装飾音、半音音階といった難易度の高い練習曲となっていき、『バイエル』が終わるころには、さまざまな作品が演奏できる準備が整っている、というわけだ。
『バイエル』には副教材として『Melodienbuch. 100 Erholungen für die Jugend, in kleinen Lectionen über beliebte Motive. Als Anhang zu der Vorschule im Klavierspiel. op.101 bis メロディー・ブック ~青少年のための100のレクリエーション、人気のモティーフによる小さな課題。ピアノ奏法入門書の補遺として』という楽譜も、バイエルによって同時かもしくは同じころに出版されていることも付け加えておこう。
1850年ごろヨーロッパで発売された『バイエル』が、なぜ日本に入ってくることになったのだろうか。それは1880年(明治13年)に、アメリカの音楽教育家ルーサー・ホワイティング・メイソン Luther Whiting Mason(1818~96)が教員として日本へやって来たことがきっかけだった。明治政府によって設置された文部省音楽取調掛では、唱歌の普及とそれに伴うピアノ伴奏のためにピアノ教育が急務だった。日本政府より招待されてやって来たメイソンが携えていた楽譜のなかに『バイエル』があった。これが日本で紹介され、やがて140年近く経った現在まで続く『バイエル』受容の始まりだった。
しかし、『バイエル』には問題点も多いと指摘されている。よく言われるのは、左手は伴奏、右手はメロディーという役割の練習曲が多いことと、前半部では生徒が演奏する練習曲には変化記号もしくは調号が出てこないこと(つまり、調性については後半部しか出てこない)などだろうか。
『バイエル』は演奏のための技術を身に付けるのと同時に、ソルフェージュをも網羅し、総合的な音楽の基礎技術と知識を習得することができる教材だ。しかし、残念ながらこういった『バイエル』が持つ問題点が声高に言われる昨今では、レッスンで用いられることが少なくなってきている。ただ、一方で、いろんな意味で『バイエル』が再び脚光を浴び始めているようにも思える。バイエルに関する研究が進み、さまざまなピアノ教則本が開発され、現在では豊富な種類が各楽譜出版社より発売されている。こういった点でも『バイエル』が日本のピアノ教育にもたらした功績は大きい。『バイエル』は、日本のピアノ教育の礎であることは間違いないだろう。
*『バイエル』の楽譜はPDF化されたEcole préliminaire de piano(BnF Galica)を参考にした
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