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ベートーヴェン :サリエリの歌劇「ファルスタッフ」の二重唱「「まったく同じだわ」」の主題による10の変奏曲 WoO.73

Beethoven, Ludwig van:10 Variationen über das Thema(Duett) "La stessa, la stessissima" aus der Oper "Falstaff" von A.Salieli WoO.73

作品概要

楽曲ID:1050
作曲年:1799年 
出版年:1799年 
初出版社:Artaria
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:変奏曲
総演奏時間:10分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

執筆者 : 稲田 小絵子 (569文字)

更新日:2008年7月1日
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1799年に作曲された3つのピアノ変奏曲のうちのひとつである。主題としたアントニオ・サリエリ(1750-1825)の歌劇は、その年の1月3日に初演されたものなので、ベートーヴェンの変奏曲がその翌月に出版されているのは驚くべき早さである。だが本当に驚くのは、この作品に見られる変奏技法の思い切った方向転換であろう。

この変奏曲は、例えば前作WoO 72などとは異なり、どの変奏でも主題旋律が変容されて聞き取りにくくなっている。第1変奏からすでに旋律は上行音型に取って代わられ、伴奏の和音とリズムが名残をとどめているにすぎない。これまでの聴衆にわかりやすい変奏から、中期・後期作品にみられる新しい方向へと踏み出した変奏曲といえる。

また、第6変奏の冒頭がポリフォニックであることは注目に値するだろう。特に後期に特徴的なフーガ的書法が、すでにここで試みられているのである。

そして「アラ・アウストリカ(オーストリア風に)」と指示された長い最終変奏では、3/8拍子へと変化する。主音である変ロ音が持続的に鳴らされる上で、レントラーなどの民俗舞踊を思わせるリズムが奏されるのである。こうしたキャラクターの変奏も後期作品との関連を思わせる。そして最後にはそうした舞踊的変奏も次第に崩され、何事もなかったかのように主題そのものが回帰して作品を閉じるのである。

執筆者: 稲田 小絵子