
解説:朝山 奈津子 (798文字)
更新日:2007年5月1日
解説:朝山 奈津子 (798文字)
ドイツの作曲家。ヨハン・ゼバスティアン・バッハと最初の妻マリア・バルバラの第2子。「ベルリンのバッハ」、あるいは「ハンブルクのバッハ」と呼ばれる。バッハ家の子どもたちの中でもっとも多くの作品を残し、生前の名声は父を上回るほどで、当時は「大バッハ」と称えられた。音楽史上ではバロックとクラシックの二つの時代を繋ぐ音楽家として重要な存在である。
ベルリンでは皇太子時代よりフリードリヒ大王に専属楽師として仕えた。フルート演奏を趣味とした王の宮廷ではエマヌエルの作品はほとんど演奏されず、音楽的な趣味が王と一致しないことがしばしばあり、俸給も上がらなかった。それでもベルリン時代には『クラヴィア演奏の正しい技法についての試論』(2巻、1753/1762、邦訳あり)を上梓し、クラヴィア奏者としての名声を確立した。フリードリヒ大王もエマヌエルの演奏には賞賛を惜しまなかったという。しかしついに1767年、30年仕えたベルリン宮廷を辞してハンブルク主要5教会の音楽監督に就任した。
ハンブルクでは教会や街のさまざまな行事に音楽を提供して多忙をきわめたが、さらに自ら企画して定期的な公開演奏会を開き、自作品の出版を行い、またヨーロッパ各地の音楽家や文化人と交流して活躍した。
エマヌエルの鍵盤作品はチェンバロあるいはクラヴィコードのために書かれたものである。父のJ.S.バッハやD.スカルラッティの鍵盤作品を規範としつつも、対位法の要素はあまり強くない。むしろ、装飾や走句を多用する「ギャラント様式」、唐突な雰囲気の変化や大胆な転調によって感情を直接に表現しようとする「多感様式」を特徴とする。またソナタにおいては、急‐緩‐急による3楽章の形を確立し、さらに第二主題を持つソナタ形式の原形が見られる。こうした形式に加え、音楽の豊かな効果や感情表現は、ハイドンやベートーヴェンなどヴィーン古典派に大きな影響を与えた。
作品(174)
ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) (1)
協奏曲 (33)
ピアノ独奏曲 (9)
編曲 (30)
ソナタ (90)
種々の作品 (11)