この全8曲から成る小品集は、異なる時期に作られた作品を集めて1902年に出版された。ジャン・レオナール=ケクラン夫人に捧げられている。各々の作品についている表題は、出版に際して出版社側が付したものである。但し、この曲集の最後を飾る第8曲目は、《夜想曲 第8番》と同じである。
第1曲目の<カプリッチョ>は、1899年にこの年のパリ音楽院卒業試験のために作曲された。アンダンテ・クァジ・アッレグレットの変ホ長調で8分の9拍子。随所にタイが用いられている。
第2曲目の<幻想曲>は、1902年に作曲されたと考えられている。1903年4月の国民音楽協会でリッカルド・ヴィニェスにより初演された。ワシントンで発見されたこの作品の自筆楽譜のタイトルは<アルバムの一葉>となっている。アッレグレット・モデラートの変イ長調で4分の2拍子。メロディーは付点のリズムが特徴的である。また、ナポリの6度の和音が多用されていることも印象深い。
第3曲目の<フーガ>は、1869年6月に作曲された。オーリッジによると、このフーガは、フォーレがニーデルメイエ校に在学していた際(1863年頃)に、作曲の賞をとるために自作の主題に基づいて作曲したフーガを基に作られた。アンダンテ・モデラートのイ短調で4分の4拍子。4声体で書かれ、絶えず転調する。曲の終わりに、同主短調にあたるイ長調に移旋し、10小節から成るコーダが付け加えられている。このフーガが書かれた際のフォーレの若さを考えると、フーガの主要主題を用いて移旋したコーダを書き上げたことに、フォーレの筆の巧さがうかがえる。
第4曲目の<アダージェット>は、1902年に作曲され、翌年4月の国民音楽協会でリッカルド・ヴィニェスにより初演された。アンダンテ・モルト・モデラートのホ短調で4分の3拍子。但し、ホ短調で書かれているものの、旋法的な要素が色濃く感じられ、和声も独特の雰囲気を醸し出している。この曲では、メロディーが内声に響き、全曲を通して歌われる。そしてそれは、一種の変奏のように扱われる。
第5曲目の<即興>は、1901年にこの年のパリ音楽院卒業試験のために作曲された。アンダンテ・モデラートの嬰ハ短調で4分の4拍子。左右の手の間で受け渡されるアルペジオが特徴的である。同主長調にあたる嬰ハ長調に移旋し、曲を閉じる。
第6曲目の<フーガ>は、1869年に作曲された。このフーガも、第3曲目と同様に、フォーレがニーデルメイエ校に在学していた際に作曲したフーガを基に作られたと考えられている。アンダンテ・モデラートのホ短調で4分の3拍子。4声体で書かれている。このフーガは主題のリズムを明確に提示することが難しいが、それはピアノ技法上の難しさというよりも、寧ろ、多声的な室内楽的な難しさとなっている。
第7曲目の<よろこび>は、1902年に作曲され、翌年4月の国民音楽協会でリッカルド・ヴィニェスにより初演された。アレグロ・ジョコーソのハ長調で8分の6拍子。曲全体を通して16分音符による3連音符のリズムが支配的で、それが「ジョコーソ」に寄与していると考えられる。
第8曲目は前述の通り、《夜想曲 第8番》に同じである。