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スクリャービン(スクリアビン) :ピアノ・ソナタ 第9番「黒ミサ」 Op.68 変ホ短調

Scriabin, Alexander:Sonata for Piano No. 9 'Messe noire' es-moll Op.68

作品概要

作曲年:1913年 
出版年:1913年 
初出版社:Jurgenson
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:8分30秒

解説 (1)

執筆者 : 野原 泰子 (591文字)

更新日:2007年9月1日
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スクリャービンも用いた「黒ミサ」という呼称は、友人の舞台俳優・ピアニストのアレクセイ・ポドガエツキーによるもの。スクリャービンはこう話している。「この《ソナタ第9番》は、全く無鉄砲で、そこには大変な魔物がいる・・・。」「《ソナタ第9番》で、私はかつてなく深く、悪魔的なものと関わった。――そこには真の悪がある。」

このソナタにも、ソナタ形式の枠組みは認められるが、それは大いに変形されている。展開部以降には漸次的な加速が指示されており、再現部は提示部の忠実な再現から離れて、全曲が終盤のクライマックスに向かい、漸次的に高揚してゆく構図がとられている。

提示部の第1主題(1~10小節目)と第2主題(34.3~42小節目)には、邪悪(前者)/神聖(後者)という対照的な性格が見出されている。展開部(69小節目から)では、「神聖な」第2主題が、装飾音を伴う輝かしい姿を垣間見せるが、「邪悪な」第1主題と交互になりながら、第1主題の動機を組み合わされてゆき、徐々に毒されてゆく。再現部(155小節目から)は滝のような下行音形(第1主題の動機)に始まり、「行進曲風にAlla marcia」の指示で、変わり果てた第2主題が繰り返されてゆく(スクリャービンはこの箇所を「冒涜された聖物」と説明している)。「ピュ・ヴィーヴォ」「プレスト」で熱狂の頂点に達したのち、冒頭の動機で消え入るように終わる。

執筆者: 野原 泰子