ミヨー初期の代表作の一つ《屋根の上の牛》(Op. 58) の、作曲者自身による縮約版である。原曲はハ長調で開始し、十数分の間に24の全調を網羅するが、本版は変ロ長調を主調とする(調号なし)。4分の2拍子、Animé(いきいきと)。原曲の最重要の主題A、短調の主題B、Bに付随する複調的なエピソードCが選ばれ、A-B-C-B-A で構成される。長大な原曲のエッセンスがコンパクトにまとめられ、第一次大戦後の狂乱の時代(Les années folles)の息吹を伝える。フラテリーニとは、《屋根の上の牛》の初演に登場したメドラノサーカス(Cirque Medrano)の座長一家の兄弟(François & Albert Fratellini)を指す。
なお、初版ではユベール・ムートン(Hubert Mouton)による編曲(Transcription par H. Mouton)と表示されていたが、後年のミヨーの作品カタログでは本作はミヨー自身の作品(Op. 58c)とされ、現行のマックス・エシック版にもムートンの名の表示はない。ムートンが編曲した本作の軽音楽合奏版(ピアノ付小バンド編成)が存在することは事実であり、初版当時に混乱が生じたものと推測される。現代でもこの点が訂正されないまま初版譜やリプリント譜が出回っているため注意を要する。