ベートーヴェン :創作主題による6つの変奏曲 ヘ長調 Op.34
Beethoven, Ludwig van:6 Variationen über ein eigenes Thema F-Dur Op.34
執筆者 : 稲田 小絵子 (367文字)
当時の変奏曲の多くが、聴衆にとってなじみのある既存の旋律(例えば人気のあるオペラのアリアなど)を基にしていたのに対し、この変奏曲では、作曲家自身による主題が用いられている。出版に際して、ベートーヴェンは、「本当に全く新しい手法」を用いた作品であると宣伝した。
おそらくベートーヴェンが主張したかった特徴は、6つの変奏の調性が以下のように3度ずつ下行している点であろう。
主題 :ヘ長調
第1変奏:ニ長調
第2変奏:変ロ長調
第3変奏:ト長調
第4変奏:変ホ長調
第5変奏:ハ短調―ハ長調
第6変奏:ヘ長調
調性とともに、拍子や速度表示も変化されているため、各変奏はそれぞれ異なったキャラクターを見せている。それによって、主題から変奏、変奏から変奏への変化に一瞬とまどいを覚えるかもしれないが、よく聴いてみれば、和声の安定した装飾変奏であることがわかる。
[CBJ 2020]ベートーヴェン:創作主題による6つの変奏曲 作品34
創作主題による6つの変奏曲