作品概要
解説 (1)
執筆者 : 小崎 紘一
(851 文字)
更新日:2010年1月1日
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執筆者 : 小崎 紘一 (851 文字)
ヤナーチェクがモラヴィアの民謡採集に取り組み、その成果が初めて如実に表されたと言える作品。民俗音楽の語法を下地にしながら、ツィンバロン(東欧地方で見られる大型の打弦楽器)を思わせる打鍵や、まだ色濃く残る機能和声とそこから食み出そうとするメロディなど、小品集ながら聴き所は少なくない。
作曲を開始して発表されるまでに数年を経ており、その間のオペラ《イェヌーファ》の上演、愛娘の逝去など、彼の身におきた出来事を結果的にドキュメントする形で編纂されてしまっている点が興味深い。「草が茂る小道」はモラヴィアはティエシーン地方にて、結婚式で花嫁がうたう詩からきている(「ああ、母のもとへ帰る道は生い茂るクローヴァーで覆われている」)。作曲家にとっての追憶が込められているタイトルである。
10曲のうち、大半のテーマは「喪失」である。後に弟子に語ったところによると、第二曲「落ち葉」は『愛の歌』、第三曲「一緒においで」は『読まれない手紙』、第六曲「言葉もなく」は『「失意の苦さ』―オペラ《イェヌーファ》がプラハで受け入れられなかった不遇―を描いている。また、第八曲「こんなにひどくおびえて」では今際の際での娘の様子を描き、終曲のタイトルは「もしみみずくを窓辺から追い払えねば、その病人は生き延びることは出来ない」というシレジア地方の古い言い伝えから取られている。どちらも死を匂わせる。
親しくした者とであろうか、第一曲「我らの夕べ」 や、教会の鐘の音が印象的な第四曲「フリーデリクの聖母マリア」、家族で出掛けた遠足第五曲「彼らはつばめのようにしゃべりたてた」など、暖かな想いでをモティーフとしたものがその中にうまく配されており、一枚のレコードを聴いているかのような印象を受ける。
第一曲 我らの夕べ
第二曲 落ち葉
第三曲 一緒においで
第四曲 フリーデリクの聖母マリア
第五曲 彼らはつばめのようにしゃべりたてた
第六曲 言葉もなく
第七曲 おやすみ
第八曲 こんなにひどくおびえて
第九曲 涙ながらに
第十曲 みみずくは飛び去らなかった
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