アレグロ・モデラート、ハ長調、4分の4拍子
ソナタ形式で書かれている。ピアノ・ソナタ第1番D 157と同様に、提示部の時点で遠隔調へと転調する試みが見て取れる。第1主題はハ長調のユニゾンで堂々と提示され、異なる伴奏テクスチュアを伴って確保されると、イ短調へ転じるかのような半終止(第23小節)を経て、ホ短調を予期させるロ長調の三和音へと行きつく(第37小節)。そこから急にニ長調の三和音へとずらされることにより、第2主題がト長調で提示される(第45小節)。テクスチュアが変わると、変ロ長調や変ホ長調といったフラット系の調性が顔を見せ、同主調であるト短調も見え隠れするが、最後のカデンツでト長調に終止する。
展開部では、ひたすらに転調する和声変化の試みが見られる。嬰ハ短調に始まり、ト短調や変ホ短調を通り、ヘ長調/ヘ短調へと変幻自在に転調する。
第118小節から、下属調のヘ長調で冒頭主題が再現される。再現部を下属調の第1主題で開始し、第2主題で主調に回帰するという構想は、すでにモーツァルトのピアノ・ソナタハ長調K. 545に見られる。本楽章は、ハ長調の大団円で幕となる。
本楽章のヴィルトゥオーゾな書法には、ヨーロッパ中を席巻し、ピアノ音楽を発展させたクレメンティからの影響も見て取れよう。