ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第7番 第1楽章 Op.10-3
Beethoven, Ludwig van : Sonate für Klavier Nr.7 1.Satz Presto
作品概要
解説 (3)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1144 文字)
更新日:2019年12月20日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1144 文字)
ベートーヴェンのソナタも、この時期になりますとベートーヴェンらしさがよく現れ始めています。背景には、弦楽四重奏やピアノトリオの他、オーケストラの要素、そしてピアニスティックな要素も加わり、技巧的な書法になっています。
このように、層は厚みを増して来ましたので、ダイナミックスも幅を広く取らなければなりません。皆さんお気づきになられたでしょうか?この第1楽章には実に多くのフォルテッシモが書かれております。そしてピアニッシモも書かれています。このソナタを弾く注意点としては、同じフォルテッシモでもどのフォルテッシモが最も大きいか、分析をしなければなりません。まともに楽譜の指示通り、書かれたダイナミックスで演奏すると、行き所がなくなる場合もあります。
例えば、21ー22小節間、3つのオクターブにフォルテシモが一個ずつ書かれていますね。筆者は付点2分音符に付けられたフォルテシモがこの3つのフォルテシモの中では最も大きいと思いますので、1番最初のフォルテシモはそんなに大きな音では弾かないと思います。
その他、展開部でも多くのフォルテッシモが書かれてありますので、どこがゴールになるか、考えながら分析をしていきます。分析と行っても決して難しい事ではありません。例えば展開部を見てみましょう。133ー140小節間、4小節単位のフレーズが2つと考えますと、どちらかの4小節の方がもう1つの4小節より大きいと考えます。筆者であれば最初の4小節の方が大きいと考えますがそれは自由です。
次に141ー148小節間で1つと考えます。そして、149ー156小節間で1つ。次に157ー160までで1つと考えたとき、この3つのシークエンス的なグループはどのグループが最もテンションが高いか考えます。これは、使われている和音や音の高さも含め先生と生徒で話し合ってみましょう。
次に、161ー162小節間で1つ、163ー164小節間で1つ、165ー166小節間で1つと考えたとき、この3つのシークエンス的なグループではどのグループが最も大きいでしょうか?筆者は一番最後と考えます。
次に、167ー170で1つ、171ー174で1つの2つのグループと考えます。これは1つ目の方にフォルテシモが書かれていて、2つ目は普通のフォルテですので、1つ目の方が大きいのですね。
そしてこの先、183のフェルマータが最終ゴールになりますので、ここまでテンションを上げていきます。このような分析方法により、ダイナミクスを平坦にしない工夫が必要になります。このような分析だったら生徒さんでもできますね。
このような分析により、同じフォルテシモでも本当に大きいフォルテシモやそこまで大きくないフォルテシモに分けることが可能になりますね。ご参考まで。
解説/演奏のヒント : 菊地 裕介
(325 文字)
更新日:2020年4月1日
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解説/演奏のヒント : 菊地 裕介 (325 文字)
第1楽章
ベートーヴェン自身が「ある精神病患者」を描いていると語ったという伝説をもつソナタ。冒頭はpで奏される(このソナタのすべての楽章の冒頭はpである)冒頭の第一主題は4つの音の順次下降(d-cis-h-a)による動機aと、反転して上行する3つの音(cis-d-fis)が構成する動機bという2つの要素より構成される。この2つの短い動機がこのソナタの4つの楽章において、これ以上ないほどに徹底して展開されている。第1楽章においても、その第二主題および小コーダ含め、楽章の大部分がこの前者の動機aより成っている。第1楽章では、これがアウフタクト的に配置され、リズミカルなパルスを演出している。随所にみられるTutti的に強奏される全音符などが見どころ。
解説 : 齊藤 紀子
(146 文字)
更新日:2019年3月5日
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解説 : 齊藤 紀子 (146 文字)
第1楽章はプレスト、ニ長調の2分の2拍子でソナタ形式による。ニ長調の第1主題とイ長調の第2主題との間に、ロ短調のはっきりとした中間主題をおいている。この中間主題は、再現部でホ短調で再現される。また、第1楽章がプレストによるソナタは、この他には第25番作品79のト長調のソナタにしかみられない。
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