ストラヴィンスキーは、ピアノソナタを2曲作曲している。一般的にストラヴィンスキーのピアノソナタとして知られ、演奏されているのは、この第2作目《ピアノ・ソナタ》である。
1924年に作曲された。
この3年後に、新古典主義宣言がおこなわれ、《プルチネルラ》に代表される新古典主義がはじまるが、ちょうど原始主義から、新古典主義への過渡的な性格をもっている。この頃、ストラヴィンスキーは、純粋な器楽による古典的な世界の構築をめざしていたため、この作品においても様式的な充実がみられる。
この《ピアノ・ソナタ》の作曲にあたり、ストラヴィンスキーは、「クレメンティ、ハイドン、モーツァルトのようなソナタ(古典的なソナタ・アレグロ形式)をめざしたものではなく、ソナタという言葉を“ソナーレ(sonore)”に由来する本来の意味で用いた。結果として、18世紀末以来の慣例となっている形式からも自由になった」と述べている。
急―緩―急の3楽章制でまとめられている(演奏時間は約10分)
第1楽章 (Crotchet = 112)
四分の二拍子-四分の三拍子 ソナタ形式。十二音階による歯切れのよい主題、全音音階による滑らかな第二主題、性格の異なるこれら2つの主題が、巧みに組み合わされ、展開していく。
第2楽章 Adagietto
四分の三拍子 歌謡3部形式 ヘ短調 スタッカートで奏される左手にのせて、装飾をともなった旋律が、ゆっくりと奏される。四分の二拍子、ト長調の中間部を経て、より多くの装飾をおびた第一主題が、再現される。
第3楽章 (Crotchet = 112)
四分の二拍子 調号はシャープ一つであるが、調性はほとんど感じられない。古典派のソナタと違い、ロンドやソナタ形式のかわりに、2声部のトッカータ風の楽章がおかれているのが特徴である。 大きくは3部分にわけられる。