作品概要
出版年 1942年
初出版社 Mercury Music Corporation
楽器構成 ピアノソロ
総演奏時間 約11分(各曲約2分~3分)
ナチスの侵攻を避け1940年7月に渡米したミヨーは、カリフォルニア州オークランドのミルズ・カレッジに教職を得た。ミルズ・カレッジの堅実な校風はミヨーの気質に合い、精力的に後進の育成にあたった。ミヨーの尽力によりミルズ・カレッジは一躍名門校となり、デイブ・ブルーベック、バート・バカラック、スティーブ・ライヒ、フィリップ・グラス、ウィリアム・ボルコムなど、全米から有為の青年がミヨーのもとに集うまでになる。本作では、第3曲がミルズ近くの港町(アラメダ)を題名としコープランドに献呈、第4曲が緑あふれる自宅の立地(丘の上 “Sobre la Loma”)を題名とし、このスペイン語の命名者である学園の理事長ラインハルト女史に献呈されるなど、ミヨーが新しい環境に溶け込んでいる様子が見てとれる。アメリカ西海岸の気候が故郷の南仏に似ていることもミヨーにとって幸運であった。
第1曲、第2曲はおだやかな田園の情趣が《ルネ王の暖炉》(Op. 205)を思わせるし、第3曲、第4曲はラテンのリズムが用いられ《スカラムーシュ》(Op. 165b)で初めてミヨーを知った人の期待にも応えるような良い意味での通俗性をそなえる。全曲の管弦楽版(Op. 227b)があり、1943年10月にニューヨークの CBS にて放送初演された。第1曲と第2曲の順番を入れ替え《2つのスケッチ》として独立させた木管五重奏版、クラリネットとピアノ版もある(Op. 227c)。《2つのスケッチ》ではEglogue が Pastoral と題名変更され、Op. 227c でなく Op. 227b とする表記もみられる。これら種々の楽器編成と並行して書かれているため、ピアノ版では声部の多さや跳躍などの課題を伴うが、難点を補って余りある親しみやすい曲集といえよう。
第1曲 Eglogue 牧歌。Animé, mais sans hâte(いきいきと、速すぎずに)。8分の6拍子、イ長調。1941年5月20日、カリフォルニア州オークランドにて完成。Monique and Jean Leduc に献呈。
第2曲 Madrigal マドリガル。ピアノ版ではテンポ指定が欠落しているが、木管五重奏版で Moderato となっているのを準用してよいだろう。4分の4拍子、ヘ長調。1941年8月10日、カリフォルニア州オークランドにて完成。
第3曲 Alameda アラメダ。Mouvement de Habanera(ハバネラの動きで)。4分の2拍子、ト短調。1941年10月2日、ミルズにて完成。Aaron Copland に献呈。
第4曲 Sobre la Loma 丘の上。Mouvement de Rumba(ルンバの動きで)。8分の8拍子、ト長調。1941年9月15日、ミルズにて完成。Aurelia Reinhardt に献呈。