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グリーグ :スレッター(ノルウェーの農民舞曲) Op.72

Grieg, Edvard Hagerup:Slatter(Norske Bondedeanse) Op.72

作品概要

作曲年:1902年 
出版年:1903年 
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:その他の舞曲
総演奏時間:35分30秒

解説 (1)

執筆者 : 齊藤 紀子 (2516文字)

更新日:2007年11月1日
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「スレッター」とは、ノルウェーの農民の踊り「スロット」の複数形である。ハリンゲル地方の民俗楽器の1種、ハルゲンダル・フィドル(ハリングフェーレ)で演奏されたものを、J. ハルヴォルセンがヴァイオリンのために採譜している。この曲集は、それを編曲したものであるため、器楽的な性格を持つ。1901年からその翌年にかけて作曲された。

第1曲目は<ホーヴァル・ギボエンの婚礼行列>。8分音符の後打ちのリズムが特徴的である。

第2曲目は<ヨン・ヴェスタフェのスプリンガル>。「殺人の容疑で投獄されたヨン・ヴェスタフェは、最後の望みとして1曲のスプリンガルを奏でたいと申し出る。あまりに巧みに演奏したヨンは、釈放された。」という物語を持つ曲である。重音を主体としたメロディーには、3拍目を強調する伴奏が添えられている。

第3曲目は<テレマルクの婚礼行列>。ノルウェーでは、「花嫁の涙」と呼ばれることもある。空虚5度で開始し、主として、多声的に書かれている。

第4曲目は<ハウゲロート 妖精の丘のハリング>。生き生きとした舞曲である。「妖精のフルドラがハリングを歌い、ビリニュルフ・オルソンという名の男を眠らせるが、気がつくとフルドラの姿はなかった。」という物語を持つ。そして、空虚5度で開始する。重音を主体としたメロディーには、シンコペーションによるリズムが特徴的な伴奏が添えられている。4声体で書かれた中間部は、グリーグの創作による。この部分のメロディーは、原曲のテーマの音価を拡張させたものとなっている。

第5曲目は<オス教区のプリラーレン>。この曲も空虚5度で開始する。メロディーは、重音になっている。

第6曲目は<粉挽きの若者のガンガル>。左手の規則的なリズムが特徴的な伴奏に乗り、右手が複数の音を弾く。そして、その上声と内声とは時折、へミオラによるポリ・リズムを築く。

第7曲目は<ロットナムのクヌート ハリングダールのハリング>。「ロットナムのクヌート」は、「粗野でありながら人懐っこいもの」として伝えられている。そして、クヌートは、ハリングダールで一番強い男とされている。この曲は、裏拍から入る空虚5度で開始する。また、5曲目と同様に、中間部はグリーグの創作により、この部分のメロディーは、原曲のテーマの音価を拡張させたものとなっている。

第8曲目は<粉挽きの若者による婚礼行列の曲>。伝説上、フィドル弾きの粉引きの若者が、彼と仲違いをしたために別の男と結婚することになった元恋人のカーリのために作曲した婚礼行列の曲とされている。ゆったりとしたこの曲は、この曲集全体の中間に位置づけられた緩徐楽章と捉えることもできる。

第9曲目は<ニルス・レクヴェのハリング>。バスの繰り返される音形が特徴的である。また、メロディーの中にも、そこに付けられた和声の中にもリディアの響きが見られる。

第10曲目は<クヌート・ルロセンのハリングⅠ すなわち舞曲第10>。<イェルキ・ハウケラン>と呼ばれることもある。「イェルキ・ハウケランは、クヌート・ルロスの兄弟のオイスタイン・ルロスと婚約していた。しかし、彼女はこの婚約を破棄して別の男のところへ嫁いで行った。彼女は、その結婚式でルロスからの贈り物のベルトを締めた。テレマルクの楽師たちはこれを見過ごしはせず、結婚式でハリングを弾いた。それに合わせてオイスタインはイェルキを誘って踊り、かつて彼女に贈ったベルトをズタズタに切り裂いた。」という物語を持つ。空虚5度で開始する。そして、左右の手がポリ・リズムを築く。

第11曲目は<クヌート・ルロセンのハリングⅡ>。この曲集の中で、最も規模の大きい曲である。そして、バラードの性格を持つ。また、保続音が特徴的である。

第12曲目は<粉挽きの若者によるスプリングダンス>。<イグレトヴァイテン>と呼ばれることもある。「フィドル弾きのイグレトヴァイテンは優れた楽師であった。名手のホーヴァル・ギボエンのもとに弟子入りした彼は、その返礼に千草刈りをすることになった。しかし、後に彼は千草を放り出して家に帰ってしまった。」という物語を持つ。数多くの装飾が施され、生き生きとした舞曲である。

第13曲目は<ホーヴァル・ギボエンがオーテルホルト橋のほとりで見た夢>。この曲では、メロディーが繰り返される際に手を加えられている。そして、その表情も多様に変化する。

第14曲目は<ヴォッセヴァンゲンのトロルの婚礼行列>。拍子のない導入部を持つ。その後は、ガンガル(歩き踊り)の前進力に溢れたリズムが一貫して見られる。

第15曲目は<スクルダールの花嫁>。「スクルダールの花嫁は、その谷で最も美しい娘であった。しかし、父親の意向で気の進まぬ灰色の髪をした年寄りと結婚することになった。農場の規模を拡大させるためである。彼女は、思いつく限りの仕度を望んだ。婚礼の当日、彼女はそのようにして用意された花嫁衣裳を見に纏い、滝に身を投げた。」という物語を持つ。先立つ第14曲目と同様に、ガンガルのリズムが特徴的である。また、へミオラがしばしば見られる。

第16曲目の<シヴレ谷の娘たち>と第17曲目の<シヴレ谷の娘たち ガンガル>は、この曲集の中で最も古いメロディーが用いられる。そして、「テレマルクのとある小さな町に2人の異教徒の娘がいた。彼女たちは、ある日曜日の朝、ミサの時刻に山腹に座って山羊の角笛でスロットを吹いた。教会の会衆は、牧師の話をそっちのけにし、その音色に耳を傾けた。やがて、会衆は教会を後にし、山腹からの音色に聴き入った。牧師の説得も空しく終わり、彼は2人の異教徒の娘に呪いをかけた。すると、1人は山の岸壁に叩きつけられて苔のばらと化し、もう1人は石柱と化した。これらは今でもテレマルクのシヴレ谷で見ることができる。」という物語を持つ。

第16曲目は、スプリンガルである。そして、そのメロディーは高音域で歌われ、哀愁を帯びている。また、曲全体を通して、アルペジオや装飾音に富んでいる。

第17曲目は、タイトルにある通り、ガンガル(歩き踊り)である。この曲では、半音階的な音の動きが特徴的である。

執筆者: 齊藤 紀子

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テレマルクの婚礼行列 Op.72-3

総演奏時間:3分00秒 

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オス教区のプリラーレン Op.72-5

総演奏時間:1分00秒 

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粉挽きの若者のガンガル Op.72-6

総演奏時間:1分00秒 

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イェルキ・ハウケラン Op.72-10

総演奏時間:1分30秒 

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スクルダールの花嫁 Op.72-15

総演奏時間:2分00秒 

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シヴレ谷の娘たち Op.72-16

総演奏時間:1分30秒 

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ガンガル Op.72-17

総演奏時間:1分30秒 

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