この作品を作曲した時、グリーグは20歳であった(1863年)。そして、デンマークのコペンハーゲンに滞在しており、コペンハーゲンにあるホーネマン社から出版されている。デンマークの作家で、グリーグの芸術仲間であるベンヤミン・フェッダセン(1823-1902)に捧げられた。《詩的音画》と名づけられたこの曲集は、何かを具象しているわけではない。それだけに、演奏家にはイマジネーションが求められていると言える。
第1曲目は、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。8分の3拍子のこの曲では、2拍目に付されたアクセントが特徴的である。これは、ノルウェーの民族舞踊に由来しているものと考えられる。また、時折響く増4度もこの曲にとってある種のスパイスを効かせている。この曲の全体としては、順次進行による低声と、スラーのかけられ方に留意したフレージングが求められる。
第2曲目は、アレグロ・カンタービレ。上声と下声が歌い上げるデュエットが美しい曲である。
第3曲目は「コン・モート」で、ノルウェーのブルレスカとなっている。多様な趣を見せるリズムが重要な役割を担っている。
第4曲目は、アンダンテ・コン・センティメント。ノクターンの性格を備えており、終始一貫して分散和音によりかたどられている。
第5曲目は、アレグロ・モデラート。ノルウェーの民族舞踊の1種、ハリング(大抵は男性がソロで演じる力強い民族舞踊)を思わせる作品である。5度や増4度の響きが特徴的である。
第6曲目は、アレグロ・スケルツァンド。半音階に富んだ音の動きが特徴的である。また、無窮動の性格を持つ。