「ナバーラ」とは、ピレネーの西に広がる地名である。
アルベニスはこの曲は1908年から作曲しはじめたものの、翌年、これを完成させることなくこの世を去ることになった。そこで、弟子であり、また友人でもあったデオダ・ド・セヴラック(1873-1921)がこれを復元、補筆(26小節)し、1909年に完成させた。この補筆部分は、セヴラックらしい繊細さや美しさはあるものの、華やかさには欠けている、と評されることが多い。《ナバーラ》が本人の手によって完成されたならば、最高傑作の一つになったであろう、というような声もある。
変イ長調。8分の3拍子、アレグロ・ノン・トロッポ。
ナバーラ地方のホタの主題に基づく幻想曲。技巧的な弾きにくさはもちろん、複雑な譜面も、この曲を難曲たらしめる要因となっている。この曲は、当初、イベリア4巻に入れるものとして作曲されていた。しかし、ホアキン・マラッツへの手紙の中で、アルベニスは次のように述べている。「もし書き終えているとしても物足りない」、「書法がとても大衆的であり、嫌いというほどではないが、他の11曲につりあう新しい曲を書いたほうがよいと思う」。
官能的で、メランコリーな旋律が独創的であり、実際、多くの人々に親しまれる作品となった。
16分音符のはぎれのよい伴奏によって曲に活気が与えられており、オクターブでの和音は、曲の華やかさ、スケールをより大きくしている。自由さをもって、大げさなくらいの表現をつけながら弾くと、曲がより生き生きとしたものになるだろう。