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バッハ : 前奏曲 ロ短調 BWV 923

Bach, Johann Sebastian : Praeludium h-moll BWV 923

作品概要

楽曲ID:2247
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:3分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

執筆者 : 朝山 奈津子 (746 文字)

更新日:2007年10月1日
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アルペジオの走句の連なりのみから構成される小品。創作史においては初期に位置付けられ、バッハがロ短調を扱った最初期の作品として注目に値する。《アルビノーニの主題によるフーガ》BWV951に添えられた手稿譜が複数ある。この取り合わせはバッハ自身によるものではないが、調を同じくし、音楽の雰囲気がよく合うことから、効果的で納得のいくものである。(現代でもBWV923と951を1曲に組み合わせた出版譜が広く使われている。)

目を惹くのは、後半の二分音符の和音の連続である。おそらく未完成のスケッチだろう。バッハはこうした略記をする場合かならず「解法」を示した。第8-9小節のそれぞれ後半に示された右手のフィギュレーションは、第6-10小節の略記の「解法」とみてもよいかも知れない。(「解法」の例は《半音階的幻想曲》BWV903/1にも見られる。また、《幻想曲》BWV944/1も二分音符の和音のみからなる作品で、おそらく未完と思われる。)そもそもこうした部分が小節数の上で半分を越える長さを持つのは、あまりにバランスが悪い。加えて、和声連結はとくに終結に向かう部分であまりうまくいっていないようにみえる。いずれにせよこの種の略記には奏者の自由な想像力で音楽を補うことが求められるだろう。なお、後半部分を補ったBWV923a なる異稿が存在するが、これはバッハに近いところにいた誰かの改作とみられる。

いっぽう、前半の仕上がりは即興的でありながら緻密に作りこまれており、見事というほかない。上行と下行、十六分音符と三十二分音符を使い分け、音域とテンポを自在に操る。中間では動機を左右の手に対等に与えて展開し、八分音符の刻みに耳が馴れたところで再び鍵盤の幅いっぱいに走句を散りばめ、拍節の世界から飛翔する。

執筆者: 朝山 奈津子

演奏のヒント : 大井 和郎 (631 文字)

更新日:2024年1月8日
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このプレリュードは、冒頭から最後まで、とにかく「即興」そのもので、奏者が音価を理解した時点であとは、自由に弾くことが望ましく、まずはメトロノームのようには弾かないことが大前提です。

最も難易度の高い部分は恐らく23小節目から最後の49小節目までのアルペジオの部分で、ここをどのように弾くかで演奏レベルが変わってきます。

ハープシコードの場合、フォルテとピアノくらいしか、強弱の差はありませんが、ピアノは多くの強弱をつけれますので、多くの工夫が可能となります。

23~49小節間を大きく見たとき、ピークポイントであろう部分は2箇所あり、29~30小節間、ソプラノのFisに到達するところ、そして、47小節間同じくソプラノがFisに到達するところです。ここをゴールと考え、そこに向かって行く→到達する→衰退するという流れで、その強弱はソプラノの音の高さと思って間違いありません。音が低くなる場所は、36小節目のDであり、ここが、23小節目以降、最も低いソプラノの位置となります。

その他の注意点としては、非和声音に気を配ること。例えば、28小節目、ここは本来 H D Fisという和音で構成されて良い場所なのですが、最初の和音には、Cis E Aisという3つの非和声音が入ってきます。そしてそれは3拍目の次の和音で解決されますので、解決音は必ず、非和声音よりも弱く弾きます。

同様に、多くの非和声音が書かれていますので、和音の解決は決して大きくなりすぎないようにして下さい。

執筆者: 大井 和郎
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