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バッハ : 前奏曲(幻想曲) ハ短調 BWV 921

Bach, Johann Sebastian : Praeludium (Fantasie) c-moll BWV 921

作品概要

楽曲ID:2245
作曲年:1707年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:3分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

執筆者 : 朝山 奈津子 (520 文字)

更新日:2008年5月1日
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「アンドレーアス・バッハ本」、すなわちバッハの兄ヨハン・クリストフの楽譜帖に含まれている。バッハの真作であるかどうか議論の余地があるが、最後の3小節は紛れもなくバッハの筆跡である。

楽曲には、若きバッハの演奏者としての情熱が漲っている。現代では超人的な技巧の持ち主に対し、驚嘆(場合によっては一抹の侮蔑)を込めてヴィルウオーゾと賞賛する。フォルケルが伝えるところでは、バッハ自身はこの種の「なにを弾くべきかを指に指示するのではなく、指から教わるタイプ」の曲芸人を「クラヴィーア軽騎兵」と呼んだ。「前奏曲」とのタイトルを持つが、バッハの他の前奏曲には類似する書法・様式はみられない。

全体は5つの部分から成り、それぞれ拍子や基本となるリズムが異なっている。動機やリズム自体はきわめて単純で、ひたすらに反復される。そのため、細かい動機でどれほどの変奏、どのような和声進行できるのか、その可能性をカタログにしたような印象さえ受ける。

しかしこの曲には、動機労作や対位法技法からは得られない、聴く者をトランス状態に引き込む強い力が備わっている。現代のピアノにはさらに音色の追究の余地が残されており、バッハの異色の作品として取り組む価値は充分にあるだろう。

執筆者: 朝山 奈津子

演奏のヒント : 大井 和郎 (688 文字)

更新日:2024年1月8日
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このプレリュードは全体を通して、メロディーラインらしいものは殆ど存在せず、和音を分散したアルペジオで占められています。演奏のヒントと言うよりかは、やってはならない事を述べた方が早いかもしれません。

1 同じ強弱を続かせないこと

2 方向性が聴こえない演奏をしないこと

に尽きます。バッハの平均律曲集第1巻の1番のプレリュードも和音が分散した形で最初から最後まであるわけですが、その中でも、大きい音量にするべき和音と、小さな音量にするべき和音があるのと同じように、このプレリュードもそれに習います。

単純な例としては、例えば1~7小節間、全体を見たときに、音量の大きくなる部分はどこでしょうか?最高音はGですが、Gがトップに来る和音は2つあります。しかしよく見ると、1~2拍間の和音は非和声音Dを含んでおり、このDは、次の3~4拍間の和音でCに降りてきますので、これを解決音と見なします。その場合、1~2拍間の方が、3~4拍間よりもテンションが高いことがわかりますね。

1~2小節間の4つの和音にしても、1小節目1~2拍間の和音より、3~4拍間の和音の方がテンションが高いですが、2小節目の1~2拍間の和音は、その解決和音とも見なせますし、もっとここを1小節目よりも強く感じる人も居るかもしれません。さらに、2小節目の3~4拍間の和音は、1~2拍間の和音の解決と考える人も居るかもしれませんが、トップの音は上行していますので、更にテンションを感じる人も居るかもしれません。

基本的に、その辺りの主観的な解釈は奏者に委ねられますが、いずれにせよ、強弱を平坦にしないことが最重要課題になります。

執筆者: 大井 和郎
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