このプレリュードは全体を通して、メロディーラインらしいものは殆ど存在せず、和音を分散したアルペジオで占められています。演奏のヒントと言うよりかは、やってはならない事を述べた方が早いかもしれません。
1 同じ強弱を続かせないこと
2 方向性が聴こえない演奏をしないこと
に尽きます。バッハの平均律曲集第1巻の1番のプレリュードも和音が分散した形で最初から最後まであるわけですが、その中でも、大きい音量にするべき和音と、小さな音量にするべき和音があるのと同じように、このプレリュードもそれに習います。
単純な例としては、例えば1~7小節間、全体を見たときに、音量の大きくなる部分はどこでしょうか?最高音はGですが、Gがトップに来る和音は2つあります。しかしよく見ると、1~2拍間の和音は非和声音Dを含んでおり、このDは、次の3~4拍間の和音でCに降りてきますので、これを解決音と見なします。その場合、1~2拍間の方が、3~4拍間よりもテンションが高いことがわかりますね。
1~2小節間の4つの和音にしても、1小節目1~2拍間の和音より、3~4拍間の和音の方がテンションが高いですが、2小節目の1~2拍間の和音は、その解決和音とも見なせますし、もっとここを1小節目よりも強く感じる人も居るかもしれません。さらに、2小節目の3~4拍間の和音は、1~2拍間の和音の解決と考える人も居るかもしれませんが、トップの音は上行していますので、更にテンションを感じる人も居るかもしれません。
基本的に、その辺りの主観的な解釈は奏者に委ねられますが、いずれにせよ、強弱を平坦にしないことが最重要課題になります。