バッハ : 2つの主題による幻想曲 ト短調 BWV 917
Bach, Johann Sebastian : Fantasie "duobus subiectis" g-moll BWV 917
作品概要
作曲年:1704年
出版年:1866年
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:幻想曲
総演奏時間:2分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : 朝山 奈津子
(411 文字)
更新日:2007年9月1日
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執筆者 : 朝山 奈津子 (411 文字)
《2つの主題による幻想曲 Fantasie "duobus subiectis"》のタイトルはヨハン・クリストフ・バッハの筆写譜に見られる。ここでいう「幻想曲」とは対位法的な内容を指す。2つの主題とあるが、実際には、半音階を含む4度下行(冒頭ではアルト)と、跳躍と掛留による旋律(冒頭ではバス)、さらに回音を連ねた8分音符による対位主題(冒頭ではソプラノ)の3つがある。ラテン語のタイトルが示す「2つ目」の主題とは、あるいはこの対位主題のことかもしれない。いずれにせよ、このように互いに性質の異なる主題を組み合わせる手法はバッハの対位法楽曲の極意である。
最後まで厳格な四声を保つが、テクスチュアは簡明で、優美さを失わない。曲の短さやラテン語のタイトルからして、対位法の習作あるいは教程とみなされていたと思われるが、規模や体裁からのみこの作品を判断してはならない。選び抜かれ、極限まで削ぎ落とされた音だけを用いた佳作である。
演奏のヒント : 大井 和郎
(683 文字)
更新日:2023年9月20日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (683 文字)
冒頭と最後の2小節はカデンツになりますので、ここは自由に即興的に弾いて下さい。さて、それ以外の真ん中の部分の話になります。特にどこかに大きなピークポイントがあり、それに向かって進んで行ったり、そこから衰退していくという曲では無く、あまりドラマティックな要素もありませんので、平坦になりがちな曲です。ピークポイントと見なされるのは、55~56小節間辺りかもしれません。
演奏のヒントは次の通りです。
3小節目左手の1つ目のテーマ(主題)を追っていきますと、3小節目、g-moll、19小節目同じくg-moll、26小節目、c-moll、そして38小節目で2つ目のテーマが来てこれがd-mollになり、45小節目1つ目のテーマがB-dur、56小節目g-mollでカデンツを迎えます。
これは1つの分割方法に過ぎませんが、奏者はこの曲をいくつか、きりの良い場所で分割してください。そして各調によって音量や音質、性格等を変えてみて下さい。
例えば同じg-mollのテーマでも、3小節目はトニック、19小節目はドミナントの機能がありますので、ドミナントのほうのテンションを上げてみるとか、あるいは、B-durのテーマが45小節目に来ますのでここは柔らかな音質で、カラー変えてみると言った具合です。
もう1つ、シークエンスの上行形下行形はどこであろうとも平坦な強弱にならないように気をつけて下さい。例えば45小節目に柔らかな音質のB-durが待っているのであれば、それに向かって40小節目から始まる下行シークエンスは、ディミヌエンドをかけて45小節目まで進んでいくとスムーズに入れます。