ドビュッシー :プレリュード(前奏曲)集 第1集 沈める寺
Debussy, Claude Achille:Préludes 1 "La cathédrale engloutie"
解説 : 白石 悠里子 (349文字)
ブルターニュに伝わるイス伝説に着想を得たとされる。深い静寂さをたたえた海に、5度と4度音程からなる和音の上行による優しい音の霧が立ち込め、(第1-6小節)、かつて海に沈んだ大聖堂の鐘がゆったりと響いてくる(第7-13小節)。やがてバスがアルペッジョで動き始めるのに合わせて、徐々に霧は晴れ大聖堂が海の中から姿を見せ始め(第16-27小節)、ffの力強く重厚な響きとともに、大聖堂は完全に海の上に現れる(第28-46小節)。聖堂の中からは僧侶たちの歌が旋法的な旋律となって聞かれるが、再び大聖堂は海に飲まれていく(第47-71小節)。束の間の聖堂の復活の余韻が、第28小節からのフレーズのエコーとして鳴り(第72-83小節)、かすかに聞こえる鐘の音と霧だった静かな海が戻ってくる(第84-89小節)。
プレリュード(前奏曲)集 第1集 10. 沈める寺