この曲を演奏するに当たって2つ工夫すべき点があります。
1つは、分析をして形式をよく知ることです。何故かは後術します。まずは分析結果から。
A 1-16小節間
B 17-32小節間
A 33-49小節間
注目するべきはAセクションです。前半のAでは1ー4小節間の主題が2回出てきますね。 後半のAでも2つ目は変形ですが、同じ主題が2回出てきます。
実は前半1ー16小節間の中の2つの主題(1ー8小節間と9ー16小節間)で、異なる小節は、2小節しかありません。即ち、7ー8小節間と、15-16小節間が異なるだけで、あとは音とリズムが全て一致しています。
強弱記号が、1回目はメゾピアノ(1小節目)、2回目はピアニシモ(9小節目)ですので、2回目は1回目のエコーのようなムードかも知れません。
考え方として、1ー8小節間の終わりが読点、9ー16小節間の終わりが句点と考えます。そして重要なポイントは、「曲中何度も出てくるこの主題を決して同じように弾かないこと」に尽きます。とはいえ、1ー4小節間と、9ー12小節間は、ダイナミックで変化させるほか、それほど何か特別に変化を付けられるというような部分ではありませんね。
故に、変化は5ー8小節間と、13ー16小節間で付けます。Aセクション、2つのテーマのそれぞれの終わりの小節(7ー8小節間と15ー16小節間)は他の小節に比べて音数が多くなっていますね。この曲は、感情面の起伏が強くなったときに音数も増えると考えてほぼ間違いありま せん。
そして、テンポはルバートをかけ、自由に弾くようにします。そうすることで、各主題の雰囲気を作る事が楽になります。
後半のAでも再び主題が出てきますので、何かしら工夫が必要です。何回も出てくる主題は決して全て同じようには弾かないようにします。
もう1つの注意点はバランスにあります。左手の伴奏系は、ポリフォニーの秩序が守られています。闇雲に和音が書かれているわけではありません。1つの考え方ですが、3本の弦楽器がスムーズに1ー3小節間を奏でるとします。それぞれバス、内声部、外声部の3つがスムーズに奏でられると仮定したとき、そこまで大きなアタックが各小節1拍目に来なくても良いはずです。結果、左手の和音は可能な限りppで演奏すると良いでしょう。4小節目はさながらチェロが弾くように演奏します。
中間部はpiu mossoです。これもよく見ると、17ー18小節間、19ー20小節間は全く同じですね。同じようには弾かないように、必ず変化を付けます。この場合、19ー20の方が17ー18小節間よりもagitato気味に、前に向かうように、落ち着き無く弾くと良いです。ここは不安な心理状態の描写と考えます。