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ドビュッシー :ヴァイオリン・ソナタ

Debussy, Claude Achille:Sonate pour violon et piano

作品概要

作曲年:1916年 
献呈先:Emma Debussy
楽器編成:室内楽 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:13分10秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

楽曲分析 : 舘 亜里沙 (1942文字)

更新日:2015年6月12日
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第1楽章「快速に、活発に」:ト短調、4分の3拍子。三部形式であるが、A部分に比べてA’部分はかなり凝縮されている。短三和音と長三和音の交替が、冒頭のピアノパートの重音にもヴァイオリンパートの旋律にも用いられ、明暗の揺らいでいるような雰囲気を創り出している(なお、ピアノパートはちょうどト短調の主和音とドリアのIVとなっている)。そして主和音を離れた楽曲はなかなか和声的な解決に至らず、ようやく楽譜での練習記号1に入る部分で、明確なト短調のカデンツに収束する。しかしながらその直後に現れるのは、G-A-C-D-Fという5音音階とそこから派生した和音の帯であり、またもト短調は影を潜め、楽曲はB部分へと移ってしまう。B部分では、ピアノは3拍子のまま土台となる音響創りに徹し、ヴァイオリンが2拍子で鋭い旋律を奏でる。調号は♯4つ→調号なし→♭2つ(もとのト短調)と移っているが、これはピアノパートに調としての機能があるというよりも、Eを基音にした長三和音とCを基音にした長三和音のみでピアノパートが成り立っていることを示している。そしてその2つの和音を結び付けているのが、空虚5度の移ろう大変美しいパッセージになる。調号が♭2つに戻ったと同時に、ヴァイオリンが冒頭に奏でた旋律が双方のパートに蘇り、楽曲はA’部分に進む。A’部分では、途中で短く激しい逸脱があるものの、冒頭の旋律が繰り返され続け、音楽が収束していく。  第2楽章「間奏曲(気まぐれに、軽やかに)」:4分の2拍子。調号はト長調となっているものの、ト長調だと判断しうる部分は楽章が終止する6小節間のみとなっており、むしろそれ以前の部分では和声進行の骨格であるはずのIIVVの和音や完全協和音程が注意深く避けられているようにさえ感じられる。半音階的な音の並びや、小刻みなリズムによって、楽章全体が終始緊張感に包まれている。形式については、いわゆる定型(ソナタ形式など)には当てはめられないが、旋律の種類やテンポの指示から、序奏(18小節)→A(8小節)→挿入句(19小節)→A(14小節)→B(12小節)→C(11小節)→A(18小節)→C(11小節)→A’(8小節)→B(10小節)→終結部(6小節)に分けることが出来る。同じ小節数で区切るところが出来ないところが、まさにこの楽章の「気まぐれな」性格を表しているが、Aの旋律には必ず「動きをもって au mouvt [*mouvementの略]」という指示があり、Cの旋律には必ず「テンポを遅くmeno mosso→ルバートRubato」という指示があるため、このテンポの変化を厳密につけて演奏することによって、楽曲の構造が明確になる。  第3楽章「フィナーレ(とても活発に)」:ト長調、8分の3拍子・16分の9拍子・16分の6拍子。テーマ旋律を、ト長調の音階をそのまま活かしたような、素朴かつエキゾティックなヴァイオリンの単旋律と捉えるならば、後半がかなり自由に創られたロンド形式とみなすことが出来る。まず、ト短調のドッペルドミナント(C♯-E-G-B♭)を軸にした序奏に、ヴァイオリンの第1楽章冒頭の旋律が浮かび上がる。しかしながら、その旋律はピアノの半音階的な和声の変化とともに消えてゆき、代わりにテーマ旋律が晴れやかに現れる。このテーマ旋律のみが16分の9拍子に書き換えられていることも特徴的である。ところがテーマ旋律に応じてピアノが提示する旋律はト長調の音階音にないものも多く含まれ、楽曲は再び半音階的なものに戻される。こうしてヴァイオリンのテーマ旋律とそれに対抗するピアノパートが、2度せめぎ合った後に、緩やかな挿入句が現れる。挿入句はロ短調を基とした優雅な哀愁漂うもので、ヴァイオリンがロマンティックな旋律を奏で、ピアノもはっきりとロ短調のカデンツを示す。しかしピアノに序奏と同じ音型が現れることで、すぐにその優雅な雰囲気は途切れ、楽曲は後半部分に入る。ヴァイオリンに戻って来たテーマ旋律は、B音がB♭に低められた上にオクターブ低い音域で、前半のような爽快さはない。そして序奏が復活してから47小節後にようやく完全な形でのテーマ旋律が現れますが、前半では完全なヴァイオリンの単旋律だったのに対し、今度はA-C-Eの和音を軸にしたピアノによる伴奏がつけられ、やはり雰囲気は違うものとなっている。その後、ピアノがテーマ旋律の断片を拡大した音型を奏で、ヴァイオリンがミクソリディア旋法の音階を駆け下りるという挿入句を経て、楽曲はさらにテンポを増したコーダへと入って行く。コーダはテーマ旋律を低い音域から高い音域へと昇華してゆくもので、このソナタ全体を艶やかに締めくくる。

執筆者: 舘 亜里沙

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:4分40秒 

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第2楽章

総演奏時間:4分20秒 

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第3楽章

総演奏時間:4分10秒 

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