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ラヴェル : グロテスクなセレナード

Ravel, Maurice : Sérénade grotesque

作品概要

楽曲ID:1454
作曲年:1893年 
出版年:1975年
初出版社:Salabert
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:セレナード
総演奏時間:3分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

総説 : 神保 夏子 (274 文字)

更新日:2015年1月20日
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ラヴェルの最初の完成されたピアノ作品。自筆譜に記されたタイトルは単に《セレナード》となっている。同じく最初期の作品である《古風なメヌエット》等とともにシャブリエ (1841-1894) の影響がみられ、作曲者自身も自伝的記述の中でこれを認めている。オレンシュタインは、冒頭のスタッカートのパッセージや、題名からも示唆される「グロテスク」な雰囲気において、シャブリエの《ブーレ・ファンタスク》との類縁性を指摘している。「ピツィカーティッシモ」と指示された、ギターをかき鳴らすような特徴的なアルペッジョ書法は、後の〈道化師の朝の歌〉の先駆けともいえる。

執筆者: 神保 夏子

成立背景 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (800 文字)

更新日:2015年1月20日
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パリ音楽院在学中の1893年(18歳)頃に作曲された。作曲当時のラヴェルはシャルル=オーギュスト・ド・ベリオ (1802-1870) のピアノクラスとエミール・ペサール (1843-1917) の和声クラスに登録していたが、いずれも成績は芳しくなく、1895年には音楽院の内規によって両クラスから除籍されている。一方、同じくド・ベリオの門下生で、後にラヴェルの主要なピアノ作品の大半を初演することになるスペイン出身のピアニスト、リカルド・ビニェス (1875-1943) とは、この時期に親交を深めた。1893年2月、ラヴェルとビニェスは二人でシャブリエ宅を訪れて、作曲者自身の前で彼の《3つのロマンティックなワルツ》を演奏したという。シャブリエの影響(→総説)と、スペイン的なものへの関心は、この頃のラヴェルの作風を理解するための一つの手がかりとなるであろう。

本作品はラヴェルの生前には出版されず、《耳で聴く風景》を含む彼の他の1890年代の作品の大半と同様、一時は失われたと考えられていた。アメリカのラヴェル研究者アービー・オレンシュタインの尽力で1975年にサラベール社より出版され、同年2月23日、ニューヨーク市立大学クイーンズ校チャールズ・S.コールデン講堂でオレンシュタイン自身によって初演された。

【参考文献】

オレンシュタイン、アービー『ラヴェル――生涯と作品』(Orenstein, Arbie. Ravel: Man and Musician. New York: Dover Publications, 1991) 井上さつき訳、音楽之友社、2006年。

Orenstein, Arbie. A Ravel Reader: Correspondence, Articles, Interviews. New York: Columbia University Press, 1990.