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ラヴェル :鏡 第4曲「道化師の朝の歌」 ニ短調

Ravel, Maurice:Miroirs "Alborada del gracioso" d-moll

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:性格小品
総演奏時間:6分30秒

解説 (2)

解説 : 舘 亜里沙 (913文字)

更新日:2019年2月13日
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【第4曲 〈道化師の朝の歌 Alborada del gracioso〉】

音楽著述家M. D. カルヴォコレッシ Michael Dimitri Calvocoressi(1877~1944)に献呈された。全5曲の中でもやや異質で、舞曲としての性格が前面に出た楽曲である。バスク人の血を引いていたラヴェルはスペインに強い関心を持ち、オペラ《スペインの時》や管弦楽曲《スペイン狂詩曲》などこの国を意識した作品を多く残した。だが〈道化師の朝の歌〉は単なる「スペイン風」の楽曲であるだけではなく、ラヴェルの和声やリズムに対する鋭敏な感覚も窺える作品だと言える。  楽曲全体は厳格にテンポを刻む和音に装飾的・旋律的な音型が挿入されたA部分と、逆にテンポを揺るがしながら朗々と歌われる旋律に舞曲的な断片が挿入されるB部分とが対比された、明確な三部形式となっている。楽曲冒頭はD音を基音としたフリギア旋法にF#やC#が付加されているが、F#が音階の構成音とも装飾音とも捉えられることやC#が導音としての役割を果たしていないことから、調性が曖昧になっている。ところがD→B♭→D♭と基音が移るうちに長三和音が主和音として鳴り、43小節目に入ると嬰ハ短調のⅤ→Ⅰが提示され、調性が明確になってゆく。そしてA部分はニ長調のカデンツァによって華やかに閉じられる。B部分の冒頭もその延長でニ長調の朗詠的な旋律で始まるが、和音が挿入される度にC#音の導音としての機能が弱まり(あるいはC音から#が頻繁に落ちるようになり)、音楽はB音を基音に長調と短調の間を揺れ動く妖艶な雰囲気となってゆく。その中で右手に現れ拍節間をぼかすシンコペーションのリズムと、舞踊のステップを想起させる左手の性急な動きが対比されている。A’部分ではE♭→F#と転じた基音が嬰ヘ短調のカデンツを聴き手に期待させるが、175小節目ではその期待とは裏腹にC#→B♭/A/Gという進行が見られ、音楽は調性をぼかしたまま次々と基音を転じ、200小節目以降のコーダでようやくA(Dから見た属音)→D(冒頭に同じ)へと戻る。最後はニ長調の主和音が高らかに奏でられ、楽曲は華やかに終止する。

執筆者: 舘 亜里沙

解説 : 舘 亜里沙 (876文字)

更新日:2019年7月17日
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