close
ホーム > エルガー > 五月の歌

エルガー : 五月の歌

Elgar, Edward : May Song

作品概要

楽曲ID: 6808
作曲年:1901年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:4分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (960 文字)

更新日:2025年11月25日
[開く]

表示記号はAllegretto graziosoなのですが、この後に是非、con motoと書きたくなる曲です。この曲はある程度動きがあった方がしっくり来ます。この曲は大きく分けて2つのパートに分けることができます。1つは4小節目の2拍目から始まるこの曲の主旋律です。もう1つは38小節目から始まるもう1つの旋律です。主旋律をA38小節目からの旋律をBとします。

ABは心理状態が全く異なりますので、その辺りを上手にコントラストを付けて演奏すると良いでしょう。まずAの方の説明です。Aは、411小節間とします。この曲はA-durで書かれていて、このAの部分も411小節間はA-durで書かれているのですが、旋律はシークエンスの様に上行して、7小節目から下行します。落ち着かないですね。シークエンスが連続しているので落ち着かないのですが、落ち着かない理由がもう1つあります。それは、和音の殆どが転回形で書かれていること、そしてA-durの主和音の基本形は、11小節目に至って初めて登場することです。

転回形の和音というのは、今1つ地に足が着いていないと言いますか、落ち着かない心理状態を描写します。この場合、ネガティブな要素ではなく、むしろ嬉しく、楽しい、期待をしている、ようなわくわくする落ち着きの無さと考えます。

一方でBセクションですが、筆者はここをE-durと分析します。もしかしたら人によってはずっとA-durのドミナントが続くという分析もあるかも知れません。いずれにせよ、このセクションのバスの音に注目して下さい。バス音であるEがずっと続いています。これは音楽用語でペダルポイント とか オルガンポイント と呼ばれる作曲の技法です。このEはずっとこのセクションに存在し、その上で和音が変化しますが、このEがあるため、安定した落ち着きを感じる事ができ、Aセクションとは異なるムードになっています。

これら2つのメロディーラインを弾く時、Aは動きを付けて、Bは落ち着いてたっぷり歌い上げるというコントラストを付けてみるのは如何でしょうか?

執筆者: 大井 和郎
現在視聴できる動画はありません。