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リスト :静かな炉辺で(ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より) S.448 R.281

Liszt, Franz:Am stillen herd ("Die Meistersinger von Nürnberg" Wagner) S.448 R.281

作品概要

楽曲ID:6371
作曲年:1871年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:リダクション/アレンジメント
総演奏時間:8分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
※特記事項:ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕第3場より、ヴァルターの歌「冬の日の静かな炉辺で」の編曲。

解説 (1)

執筆者 : 上山 典子 (894文字)

更新日:2015年3月18日
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ワーグナーの 3 幕からなる楽劇≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫は、1868 年 6月 21 日 に バ イ エ ル ン 国 王 ル ー ト ヴ ィ ヒ II 世 臨 席 の 下 、ハンス・フォン・ビューロー(1830-94)の指揮によりミュンヘンの宮廷歌劇場で初演された。リストはこの作品を「傑作」と認識しており、第 1 幕第 3 場で青年騎士ヴァルター(テノール)が自己紹介のために歌う《静かな炉辺で》をピアノ用に編曲した。

原曲よりも 2 小節拡大された前奏に続き、第 1 連は原曲通りのニ長調で開始するが、装飾的な第 2 連は 6 度上のロ長調で始まり、7 小節後に原調に戻る。その後も巧みな転調(ホ長調→ニ長調→ヘ長調→ニ長調)が繰り返され、流麗な主題モティーフが原曲を超えて展開されてゆく。旋律の隙間に度々挿入されるカデンツァ、あらゆる和音に付与されたアルペッジョ、そして無数のトリルとトレモロは、この編曲の即興的性格を助長している。全体を通して装飾的で華麗、ピアニスティックでヴィルトゥオーソ的な扱いが顕著なこの編曲では、リストが独自に記入した「歌うように cantando」の用語の通り、歌詞を持たないピアノの響きがまさに「無言歌」をつくり出している。

《静かな炉辺で》は 1871 年の恐らく 7~10 月の間に完成し、年末にはベルリンのバーン

社から出版された。1874 年以降には、リプリント版も出された。タイトル・ページには、「リヒャルト・ワーグナーのマイスタージンガーよりリート/静かな炉辺で/ピアノのためのトランスクリプション」と記されている。(なお今日一般に、「トランスクリプション」は「原曲のより忠実な再創造」(A. ウォーカー、『ニューグローヴ音楽事典』(2001 年)第14 巻、767 頁)と理解されているが、リストの概念はむしろその反対で、原曲を自由に扱った編曲、コンサート・パラフレーズのような手法による編曲を「トランスクリプション」と呼んでいた。)自筆譜は現在、ハンガリー科学アカデミーの音楽学部門が所蔵している(整理番号:Fond 6/6)。

執筆者: 上山 典子

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