1928年に出版が計画されたウニヴェルザール社による《現代ピアノ作品集》には、当初、シェーンベルク《3つのピアノ曲》Op. 11(1909)から第1曲が含まれる予定であった。しかし、彼はその曲集のため新たにピアノ曲を作曲することとし、こうして1928年12月から翌29年4月にかけて成立したのが本楽曲である。わずか3分足らずという非常に短い作品ではあるものの、ソナタ形式に基づいて書かれている。
シェーンベルクは《5つのピアノ曲》Op. 23(1920–23)や《ピアノ組曲》Op. 25(1921–23)と同じく、十二音技法を用いてOp. 33aを作曲している。本楽曲では、基本形と、その反行形を増3度移高したもの、そしてそれぞれの逆行形という、限定された4種類の音列のみが用いられている。ソナタ形式の提示部にあたる冒頭24小節間では、同じ音列に基づく2つの主題が、異なるかたちで提示される。第1主題は、音列の頭から順にとった4音からなる3つの和音の連続で構成される。対照的に第2主題では、基本となる2種類の音列を前後半に分けた6音からなる音列が、旋律的かつ同時に示される(第14小節〜)。展開部は短いものの、前半は第2主題の、後半には第1主題の要素が見られる(第25小節〜)。強弱も最大のフォルテフォルテシモとなり、楽曲の最高潮を迎える。フェルマータ後の再現部では、2つの主題がやや形を変えつつあらわれ(第32小節〜)、和音が特徴的な第1主題によるコーダとなる(第37小節〜)。
ソナタ形式を基礎とし、限られた素材のみで作曲するという試みには、彼自身が徹底的に分析していた古典派やロマン派の作品からの影響を読み取ることもできる。従来の作品の形式および様式を取り入れつつ、十二音技法によって作曲された本楽曲は、シェーンベルクの作曲法の発展における重要な段階に位置づけられよう。