コンクールの課題や発表会の曲に選ばれる有名なソナチネです。奏者は、他のカバレフスキーの作品(ピアノ、オーケストラなど)もよく耳にしておいて、カバレフスキーのスタイルを知ることが重要です。
このソナチネを演奏するにあたってどうしても必要な要素が1つあります。それはある程度の速いテンポになります。このソナチネを遅く演奏することは全てが重たくなり、曲を台無しにしてしまいます。最低でも2分音符=120は欲しいところです。もちろん出来ることであればそれ以上が望ましいです。
次に必要なことは強いフォルテとマルカートな演奏です。このソナチネは大きく2つに分けることが出来て、皮肉、怒り、決然、と言った部分(冒頭)、それに対して32小節目から始まる悲しい歌の部分の2つです。1小節目から31小節目まではとても強く、厳しく、緊張感があり、マルカートで全ての音をハッキリと弾く必要があります。
次に必要なことは、それらのマルカートで演奏されるべき和音や重音のバランスになります。いくら強い音が欲しいと言っても右手の1の指に力は入ってしまっては和音のバランスが崩れます。右手1の指と左手を若干控え、右手の5の指や4の指でトップ(メロディーラインにあたる最も高い位置に書かれてある音)をきれいに出さなければなりません。例えば冒頭3つの和音は、E D A と聴かせなければなりません。この和音のバランスや、トップの扱いが、最終的にこのソナチネをよく聴かせることが出来る「伴」になります。
技術的な話になりますが、3小節目、1拍目裏拍から2拍目表拍までの8分音符2つの扱いの話になります。このパターンは曲中至る所で見ることが出来ます。最も典型なのは、20小節目2拍目裏拍より22小節目2拍目表拍までのパターンです。演奏のコツとしては、まず8分音符2つに力を入れないようにします。あたかも装飾音のような扱いにします。そして8分音符2つのすぐ後の重音に力が入るようにします。この重音を弾くときそこにアクセントが入りますのでその反動で手は上に上がるのが自然なモーションになります。ただし、今の場所は次から次へとシークエンス的にこのパターンが現れますので、手を上に上げている時間はありませんね。それでも1つの流れとしてそうお考えください。
和音の解決にも十分気を遣います。例えば、13小節目、1拍目左手のDis Fis Ais は次の拍でE G H の和音に解決されると考えますので、Dis Fis Aisは強く、E G H はアクセントを付けずに手を上にあげ、力を抜くようにします。
続いて32小節目から始まるメロディーですが、こちらもトップの音をよく出してメロディーラインをハッキリと聴かせてください。ある程度、気持ちブレスを取ったり、衰退したりというテンポの揺れは大丈夫ですが、極端にルバートなどをかけてはいけません。ほぼテンポ通りに揺らさずに進んでください。その中で音楽性を出すようにします。