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リスト : バラード 第2番 ロ短調 S.171 R.16

Liszt, Franz : Ballade nr.2 h-moll S.171 R.16

作品概要

楽曲ID:557
作曲年:1853年 
出版年:1854年
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:14分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (213 文字)

更新日:2010年1月1日
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リストはピアノ独奏のバラードを2曲書いているが、特に何かの物語について音楽にしたと言うわけではなく、詩的で劇的な叙情を盛り込んだ作品としている。リストの2曲のバラードの内、圧倒的に演奏される機会の多いこの第2番は、ロ短調ソナタが完成された1853年に書かれた充実した作品。

曲は、大きく息の長い男性的な旋律と優美で可憐な女性的な旋律が対照的に現れ、半音階やオクターヴなどの様々な技巧に混じって、幻想的で激しく劇的に広がっていく。

演奏のヒント : 大井 和郎 (1279 文字)

更新日:2015年5月12日
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多くのリストの音楽は、天使と悪魔が、あるいは天国と地獄が1つの曲中に描写され、それが交互に現れます。このバラードもそのような典型的な、両極端のコントラストが書かれています。また、多くのリストの音楽はほんの2−3の素材から書かれていて、その素材が次々と変化をしていきます。大切なことは、どの部分においても、その素材がどの素材であるかを理解し、オリジナルの素材を演奏した時にシェイプするメロディーラインを、「素材のひとつ」として認識・演奏することが望ましいと思います。

例を見てみましょう。

3小節目から17小節目まで、上段のヘ音記号、最も高い声部に書かれているのがメロディーラインです。棒の向きは上です。下に棒が向いているラインはメロディーではありませんので、この2つのラインを混同させることなく、はっきりと独立させてください。この素材の最後の音は、17小節目の付点四分音符のHになります。このラインは13小節目のCisからD、E、Fis、G、A、と上行し、Hで終わりますので、Hの前のGやAと辻褄を合わせなければなりません。17小節目に rinforzと書いてあると、このHをとかく大きく弾いてしまいがちですが、Aから来る音量に合わせてcresceしてください。

例えばこのような「辻褄を合わせる」ことが、各素材を扱う上で重要になります。この曲の主旋律のように大きな音価の音符で書かれ、多くの小節に、広く長く書かれるメロディーラインは、メロディーのシェイプが難しくなります。このような時、メロディーラインだけを単旋律で抜粋して、速いテンポで弾いてみましょう。そうすることで、メロディーラインの扱いがとても楽になりますね。この速いテンポで弾いた時のシェイピング(※)を覚えておいてください。そしてそれをあらゆる箇所に出てくる同じ素材に生かすようにします。24小節目からは天使を思わせるような甘美なメロディーとなりますが、26小節目1拍目にあるHisは非和声音になります。非和声音は通常和声音に戻りますので、その和声音が次の8分音符のCisになります。従って、Cisにアクセントがついたり、Hisと同じ音量にならないように気をつけ、消えていって下さい。

さて、奏者が見落としがちなのが113小節目から始まる素材です。このラインは3小節目から始まるラインと全く同じものです。上段ヘ音記号上の2分音符で書かれているのがメロディーラインです。118小節目では下段ヘ音記号へ移動している事を見逃さないように。そして119は和音になっていますがこれは9小節目と一致していて、終わり方は異なるものの明らかに、Gis、A、H、Cis、E、D、という119−122小節のメロディーラインは13−17小節目のCis、D、E、Fis、A、G、とぴったり一致します。ゆえに、このFFが多く見られる部分においても、オリジナルのシェイピング(3−17小節)を忘れずに、3−17自分が感じるシェイピングで処理をします。

※シェイピング:旋律のピッチやリズムによって音量を変えて滑らかなラインを作ること

執筆者: 大井 和郎

楽譜

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