第1曲 変ホ長調
おそらく3曲中最後に書かれたと思われるこのロマンスは、わずか49小節と3曲中最も短く、前奏曲的な役割を果たしている。3部形式からなり、Aでは一貫した16分音符の流れるような伴奏形の土台の上に、短いモチーフが繰り返し和声の中から響いてくる。Bでは変ト長調からイ長調、再び変ト長調と半音階的に転調する中、旋律に16分音符が移りさわやかに流れる。
第2曲 ト短調
クララはこのロマンスを「小さな、憂愁をたたえたロマンス」と表現し、またそれに付け加えて「それを作曲している間、私はずっとあなたのことを考えていました」とローベルトに書いた。そして次のような、今この曲を弾こうとする者にとっても有益な、しかし最後には彼女らしい謙遜した言葉とともに楽譜を送った。「あなたはそれをとても自由に―時に情熱的に、そして再び悲しげに―弾かなくてはいけません。私はその曲が大変気に入っています。それをすぐに送り返してください。その欠点を探すのに臆病になることはありません。私のためになることですから。」これに対して、ローベルトは「君の楽想一つ一つは、このぼくの心から発している。実際のところ、ぼくが自分の音楽すべてに関して感謝しなくてはならない相手は君だ。ロマンスで変更すべきところは何もない。この曲は、このままの形でなくてはならない。」と返事した。このロマンスは、ローベルトの《フモレスケ》作品20にインスピレーションを与えたのではないか、と言われている。
3部形式からなり、クララの言葉通りAとA’ではト短調でメランコリックな雰囲気が支配する。Bは平行調の変ロ長調で、情熱的で快活。この二つは対照的である一方、テンポの入念な変わり目(Nach und nach schnellerやTempo wie zu Anfang)、8分音符の刻みというリズム的類似によって、自然に変化している。冒頭のテーマがppの和音とともに回想されるコーダで、あたかも無限に続くかのように次第に消えていく。
第3曲 変イ長調
表情や雰囲気の異なる、いくつかの特徴ある魅力的な楽節がロンド風に構成されている。全体的にはABA’という3部形式だが、Aは7つの楽節からなり、ショパン風の(《バラード第3番》の冒頭の和声とよく似ている)a、ポリフォニー的なb、ワルツ風のc、Animatoと記された付点リズムが生き生きとしたdが a b a’ c d c’ a”と配置されている。バスラインも工夫されていて、a、b、dでは基本的に主音が保続され、Cでは1音ずつ上行する。変ニ長調のBは、その冒頭のモチーフを展開していく。先ほどのcとやや似たワルツ風の伴奏であるものの、1拍目が8分休符であることによって、独特のリズム感を生み出している。A’は、cとdは再現されず、a”’ b a””とかなり簡略化される。