シューマン, クララ : 4つの性格的小品 Op.5
Schumann, Clara : Quatre pieces caracteristiques Op.5
作品概要
作曲年:1835年
出版年:1836年
初出版社:Whistling
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:12分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部
(1166 文字)
更新日:2019年6月25日
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執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (1166 文字)
何年にもわたって作曲されたこの作品集は、音楽における先進的な「ロマン主義」を反映した作品である。この作品を1836年9月にショパンのために演奏し、すっかり感激した彼はその楽譜を持ち歩いていた、と父ヴィークが日記に誇らしげに記録している。
第1曲 即興曲 魔女の狂宴(サバト)
この曲は、1つの同じ音形に支配されている。それは、2つの16分音符と1つの8分音符によるリズム型、鋭い不協和音を生み出す半音階的前打音のついた跳躍、弱拍のアクセントやsfという19世紀の典型的な「悪魔的」語法からなる。このパターンがやや単調とも思えるほどに全曲を通して繰り返されるのだが、その分変化を託された和声が絶妙な役割を果たしている。そしてそのタイトル通り、あわただしく走り去るテンポと相まって、荒々しい幽霊の踊りを連想させる。この作品は単独で1838年「魔女の舞踏」としても出版されている。
第2曲 ボレロ風カプリス
冒頭から同音反復のモチーフが、プレストで駆け巡る。クララのヴィルトゥオージティを示すのに、うってつけの曲だったことだろう。中間部は対照的に、穏やかに歌う。流れの中から浮かび上がる美しい息の長い旋律は、夢見る乙女のようなクララのもう一つの面を垣間見させる。再現部の後、ホ短調からホ長調に転調したコーダで、これまでのモチーフを回想しffの和音で華やかに幕を下ろす。
第3曲 ロマンス
3部形式。まず始めのロ長調、美しい旋律が非常に表現豊かに歌い上げられる。それを支える半音階を駆使した斬新な和音進行が、色彩感を与えている。ニ長調に転調した中間部は、とても情熱的。ターンやトリル、アルペッジョといった装飾音がますますテンションを高める。しかし急激に陰りを見せ、再現部は同主短調のロ短調で現れる。冒頭とはうってかわって悲しみにあふれ、寂しげな雰囲気の中、ppで静かに終わる。
第4曲 幻想的情景―亡霊たちの踊り
全体を通して快活なこの曲は、曲想がころころと変わる印象を受けるが、大雑把に図式化するとABCDC’B’A’というシンメトリー構造をしている。Aの中間部やDに見られる半音階的前打音や大きな音程の跳躍をはじめ、リズミカルに鍵盤上を駆け巡る様は、第1曲同様「亡霊」という超自然的な表現に役立っていて、一種のチクルスにもなっている。
興味深いのは、Aの冒頭減5度のモチーフと、Bの鼓動するリズムが特徴的な左手の旋律だ。これらをローベルトが、Aを完全5度に変えBと組み合わせることで、彼のクララに捧げた《ピアノ・ソナタ第1番》の第1楽章に用いているのだ。彼はクララへの手紙の中で、このソナタは「ぼくの心から君の心への呼びかけであり、君の旋律があらゆる形をとって出現する曲」と書き送った。結婚前の若き2人の音楽家の音楽的関係が、よく表れている例と言えよう。
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