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高橋 悠治 :ピアノのための《さまよう風の痛み》

Takahashi, Yuji:The Pain of the Wandering Wind

作品概要

作曲年:1981年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★

解説 (1)

解説 : 高橋 悠治 (1069文字)

更新日:2019年5月14日
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「韓国の詩人、高銀(고은)の『臨終(임종)』に作曲した歌曲のメロディーを変形したもの

メロディーの構成音はそれぞれ固有の音色となり

ピアノは分解されて音色の合奏体になる」(高橋悠治)

"a transformed melody from the song "Imjong" I composed to Ko-eun's poetry

each note of the melody having different coloring

a piano become an ensemble of interlocked timbres" (Yuji Takahashi)

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臨終     高銀

ニムよ わたしは西方浄土へ行きたくないのです

死んでも この国から離れないつもりです

死ねばからだは土となり

水や風になり

それも この国の風になり

魂は荒れ狂う亡霊となって

野山に棲むのです

こうして何千年さまよえば

死んでこそこの国すべてがいのち

栄山江(ヨンサンガン)の岸、論山(ロンサン)江景(カンギョン)にさまよい

行かれなかった大同江(テードンガン)や牡丹峰(モランボン)の上もさまよって

鳥が鳴けばわたしも泣いて

この国の涙となり

深夜の酒で

嘆きのすべてを酔わせてみたいのです

ここに生まれるときは

この国をさまようために生まれて

ほかのことをするためにではないのです

ひとつの悲しみが切れ切れにちぎれた悲しみのすべて

沈む月明かりに誘われて わたしは

西方浄土へ行きたくないのです

死んでも

この国の最後の夜の亡霊になりたい

水は凍り 風吹き荒れる時も

いっしょに氷の下の水となり

いっしょに風の痛みの風の歌になりましょう

ニムよ この国から どうして離れられよう

この国の土や水

黄土の丘に立つ松の木さえ

何千年の歴代かさねたハラボジたちなのです

死んでも いつまでもいっしょにいるのです

降りしきる雨のしずくで

立ち枯れた草をそだてましょう

ニムよ わたしは死んでも西方浄土へ行きたくないのです

そこへ行くとは そこへ行くとは

どうして西方浄土へ行けましょう

死んでもこの国の亡霊になるのです

執筆者: 高橋 悠治

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