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坂本 龍一 :戦場のメリークリスマス

Sakamoto, Ryuichi:Merry Christmas Mr. Lawrence

作品概要

作曲年:1983年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★

解説 (1)

総説 : 仲辻 真帆 (1032文字)

更新日:2015年4月21日
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大島渚が監督を務めた『戦場のメリークリスマス』は、1982年から1983年にかけて制作された映画である。このとき、坂本龍一は「俳優も初めてなら映画音楽も初めての素人」(坂本、2009:147)であった。アメリカ映画『市民ケーン』(1941年)における映像と音楽との関係を参考にしながら、映像の力が弱いところへ音楽を入れるという方針を固めたという。  《Merry Christmas Mr. Lawrence》の創作にあたり作曲者が残したメモには、「ペンタトニック」、「東洋」、「日本っぽく」などの書き込みがある。この曲は、音階にいわゆる「ヨナ抜き音階」(ペンタトニック)が用いられている一方で、和声進行にIV→V→VI→III(もしくはIV→V→III→VI)の動きが多く見受けられる。「ヨナ抜き音階」は、日本の唱歌・民謡・演歌などに取り入れられている音階であり、サブドミナントからドミナントを経てVIの和音へ移行するかたちは西洋古典音楽の基本的な終止形である(偽終止)。そのため、この曲を「東洋と西洋の融合」という観点から解釈できなくもないが、坂本自身の発言を参照すると、映画の背景として「東でも西でもない、西洋人も東洋人も同様に感じることができる、あるオリエンタルな空想の場所で、古代であり、現代であり、つまり時間的にもどこでもありうる場所」※を想定していたことがわかる。  また、4度音程の散りばめられた音型が繰り返し現れることも、《Merry Christmas Mr. Lawrence》の特徴に数えられる。特にテーマの反復は、聴き手の感慨を呼び起こすための一種の「装置」として機能している。  なお、この作品に魅了されたアーティストは数多く、デビッド・シルビアンの《Forbidden Colours》(邦題《禁じられた色彩》)をはじめ、ピアノ伴奏付独唱、ギター独奏など様々な編成によって演奏されてきた。坂本自身、アルバムやライヴにおいて、時にはアレンジを加えながら何度も演奏している。様々なアレンジに耐え得る柔軟性こそ、この作品の魅力と言えるのかもしれない。 ※注:『坂本龍一・全仕事』(山下邦彦編集、太田出版、1991年)163頁より引用。同書によると、原文は『キーボード・マガジン』1983年5月号に掲載された。 【引用・参考文献】 坂本龍一『音楽は自由にする』(新潮社、2009年) 『坂本龍一・全仕事』(山下邦彦編集、太田出版、1991年)

執筆者: 仲辻 真帆
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