スペイン内戦や、第二次世界大戦の勃発、身内の不幸などが重なり、作曲活動もままならないまま10年近く過ごしていたモンポウだったが、1941年パリから故郷バルセロナに戻り、積極的な創作活動を再開することができるようになった。《風景》は1942年に作曲された。全3曲あるが、第1、2曲をまとめて第一巻、第3曲が第二巻となっている。
1.泉と鐘 / No.1 "La fuonte y campana":調号なし、4分の2拍子。モンポウの家の庭にあった噴水と、そこできかれる鐘の音がノスタルジックに描かれている。Gであらわされる鐘は何度も低音でうちならされ、空気を優しく包み込む。ここでは10度の音程が登場する。つづく16分音符は、湧き出てくる水のように奏され、透明感のある響きが美しい。後にモンポウの妻となるカルメン・ブラーボにささげられた一曲。
2.湖 / No.2 "El lago":調号はかかれていない。4分の4拍子。16分音符の響きは非常に繊細で、湖の静かなたたずまいを想わせる。その中で息の長い旋律が浮き上がるように歌われていく。クワジ・カデンツァで落とされた音が水面に広がる波紋となり、つづく32分音符の音型を作っているようだ。印象派的な描写が面白い一曲。
3.ガリシアの馬車 / No.3 "Carros deGalicia":調号なし。4分の2拍子、レント。放浪者が歌うガリシアの歌から発想を得て作曲された。冒頭から不協和音が連なり、より調性もあいまいになっている。おさえられた音量の中で同和音が繰り返されており、不安感が増す。緊張感を維持し、重心を安定させて奏する。