ベートーヴェン :ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」 第1楽章 Op.57

Beethoven, Ludwig van:Sonate für Klavier Nr.23 "Appassionata" 1.Satz Allegro assai

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:9分00秒
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解説 (1)

解説 : 岡田 安樹浩 (1093文字)

更新日:2019年1月14日
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(第1楽章)8分の12拍子 ヘ短調 ソナタ形式

[提示部]

主要主題は、特徴的なリズム・パターンによる主和音の分散和音と属和音上のトリル音型という2つの動機からなり、これがすぐにナポリII度の調(変ト長調)で繰り返される。第5交響曲Op.67の第1楽章で中心的に用いられる、いわゆる「運命の動機」も低音域に姿を見せる。

和音の上行連打を挟みつつ主題が確保された後、変ホ音の同音連打による推移部が変イ長調の副次主題を準備する。

主要主題における分散和音のリズム・パターンと類似した変イ長調の副次主題の提示に続き、低音域での分散和音のなかに主要主題後半のトリル音型を取り込んだ変イ短調のもう1つの副次主題があらわれる。切れ間なくコデッタへなだれ込み、高音域の細かい分散和音と低音域へ下降する長い音価の分散和音によって、5オクターヴ隔たった変イ音に収束する。

[展開部]

提示部の反復はなく、提示部最後の変イ音を異名同音の嬰ト音に読み替えてホ長調に転調する。まず主要主題がホ長調であらわれ、後半の動機(トリル音型)が発展的に繰り返される。次に前半の動機(リズム的分散和音)がホ短調、ハ短調で展開され、変イ音の同音連打へたどりつく。これは紛れも無く提示部の推移部分であり、続いて変ニ長調で第1の副次主題があらわれる。

この副次主題が変ロ短調、変ト長調へと発展し、変ト音を嬰へ音に読み替えてロ短調を一瞬経由して主調であるヘ短調の二重ドミナント、そしてドミナントへと進行する。

導音上の減7和音(属9和音の根音省略形ともいう)の幅広い音域の分散和音、高音域と低音域で繰り返される変ニ音→ハ音の「運命の動機」が再現部を導く。

[再現部]

「運命の動機」から引き続く低音域でのハ音、すなわちヘ短調の属音の連打の上に主要主題が再現される。同主長調であるヘ長調で確保されたのち、推移を経てヘ長調、ヘ短調で再現される。

[終結部]

結句は5オクターヴ隔たったへ音へは収束せず、そのまま細かな分散和音と低音域に主要主題前半の動機が発展的に繰り返される。変ニ長調へ転じて第1副次主題があらわれ、ヘ短調へ戻るも、すぐにナポリII度の和音からはじまる分散和音のデンツァ風の楽句が挿入される。「運命の動機」が繰り返されるなか、Piu Allegroとなって第1副次主題がヘ短調であらわれ、最弱音(PPP)へ沈み込んで終結する。

提示部の主題がすべて主要主題から導き出されている動機展開技法のほか、展開部の提示部との構造上の共通性、終結部が第2の展開部にまで拡大されている点など、多くの面で円熟したベートーヴェンのソナタ形式楽章の姿がみてとれる。

執筆者: 岡田 安樹浩

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