ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」 第1楽章 Op.53
Beethoven, Ludwig van : Sonate für Klavier Nr.21 "Waldstein" 1.Satz Allegro con brio
作品概要
解説 (1)
解説 : 鐵 百合奈
(406 文字)
更新日:2019年10月6日
[開く]
解説 : 鐵 百合奈 (406 文字)
更新日:2019年10月6日
[開く]
Allegro con brio 4/4拍子 ハ長調
ソナタ形式。力強い生命力を秘めた和音の同音連打で始まる。長2度下の変ロ長調へ意外な転調をし、溝に落ちたような感覚を覚えるが、すぐにハ短調に戻る。第14小節からは空気が澄むようなトレモロとなり、長2度上がってニ短調に。推移部はさらに長2度上のホ短調に進み、コラール風の第2主題はホ長調で提示。これは第1主題の長3度上の調(遠隔調)だが、それを感じさせない巧みな推移によって、天上的な幸福感に安心して包まれる。第1主題を展開し、第112小節目からはハーモニーの色合いを重ねて音型のフォルムをぼかし、谷底を漂う霧のように低音がうごめく中から、右手の煌めく音列がほとばしり、再現部に到達。第2主題の再現は主調から短3度下のイ長調で、構築的な三度音程による調設計が徹底される。コーダは意外な転調と衝撃的なsfを繰り返し、第2主題と第1主題の三度目の登場で締めくくられる。
執筆者:
鐵 百合奈