ベートーヴェンの代表的なソナタの1つです。この辺りからの作品は、2楽章も、3楽章も(終楽章も)、大切な楽章として、各楽章の流れがプログラム的になっています。この1楽章も、ベートーヴェンの強いエネルギーを充分感じさせる楽章です。しかしながら技術は大変難しく、左手のトレモロができるかできないかで、仕上がりが変わってきます。26小節目や30小節目等の左手のトレモロがどれだけ速く正確に弾けるか試してみましょう。もちろん、これらのトレモロが、練習次第で弾けるようになることも充分にあります。そして、これらの3連符の速度が全体のテンポを決定します。あまりにもテンポが遅すぎても、曲のイメージが崩れてしまいますので、ある程度のテンポが要求されることになり、つまりは3連符を速く弾ける技術が必要となります。
1-2小節間
ラルゴとは、幅を広くという意味があります。ペダルを踏み、音がいつまでも鳴り続けているのをゆっくりと聴くようにします。残響を聴くように、ハーモニーを聴き続けます。
2ー5小節間
右手8分音符の連符はアーティキュレートされていますね。ヴァイオリンのボーイングを連想してみて下さい。そして、その場合、2つの8分音符の1つ目の音が非和声音、2つ目の音が解決音になっていますので、2つ目の音は1つ目の音より小さく弾きます。手のモーションとしては、2つ目の音を弾いた瞬間に指が伴盤から上に離れるようにします。つまり、下ー上、下ー上のモーションの連続です。
彼がクレシェンドを要求しているのは4小節目の終わりからですね。ですのでここまでpで弾いて、クレシェンドと書かれている位置からクレシェンドします。その前はしないようにします。
8ー13小節間
2ー5小節間と比べ、あきらかにテンションは上がります。休符も左手に入ってきますし、11ー12小節間、強拍の位置に休符が入ってきますね。agitatoの雰囲気で、テンションは一気に上がります。そして13小節目のフォルテに達します。
21ー28小節間
4小節単位で2つに分けて考え、1つ目よりも2つ目の方を大きく弾きます。各フレーズ、最初の1小節にはスタッカートがありますので、ここはペダルを入れません(1拍目は入れてもかまいません)。残りの3小節は、左右ともにレガートにするためにペダルを入れます。
29ー41小節間
29小節目で、28小節目から来たフォルテを一度pに落とします。落とさないと行き所がなくなるからです。一度pに落としてから、41小節目を目指してテンションを上げていきますので、最初からあまり大きな音で弾かず、41小節目のためにフォルテを節約しておきます。
79ー80小節間
難所の1つです。左手上声部2声と、バスの声部、双方とも切れないように、かつ、ペダルが濁らないようにします。以降、83ー86小節間も同じです。
93ー98小節間
6小節間に3つのユニットがあると考えます。各ユニット、和声も異なりますので、同じppでも変化を付けます。また細かいアルペジオの音符の速度も各ユニット毎に変えることで、カラーが変わります。
133ー136小節間
9割の学習者がカウントを怠る箇所です。それまでの小節と同じように、2拍子をきちんと数えます。全音符だからといってフェルマータ的に弾いてはいけません。全音符であろうと指揮者がカウントしています。
143ー148小節間
この6小節間、ペダルを踏みっぱなしにする奏者の方が恐らく多いと思います。実際そのようにペダルマーキングが書かれています。しかしこれはあくまでベートーヴェンの時代のピアノに合わせて付けられたマーキングです。これを我々が現在使用しているピアノで同じ事を行えば、激しい濁りが生じます。筆者であれば、ある程度濁ってきた時点でペダルを変えますが、ここは主観的な話になりますので、ご自身の判断にお任せします。155ー158小節間も同じです。
219ー224小節間
先ほどの、143ー148小節間の問題と同じ問題です。この6小節間、ペダルを踏みっぱなしにするマーキングが書かれていますが、本当にそうしてしまうと、何の音が鳴っているのかさえも解らなくなるほど混濁しますし、ppが出なくなります。ここは極力ペダルを減らすか、無くすか、して下さい。