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ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第17番「テンペスト」 第1楽章 Op.31-2

Beethoven, Ludwig van : Sonate für Klavier Nr.17 1.Satz Largo-Allegro

作品概要

楽曲ID:30714
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:9分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
ピティナ・コンペ課題曲2025:F級

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4 発展5 展開1 展開2 展開3

楽譜情報:3件
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解説 (2)

解説 : 岡田 安樹浩 (775 文字)

更新日:2019年1月14日
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第1楽章 ニ短調 2分の2拍子 ソナタ形式

(提示部)

属和音・第1転回形の分散和音によって開始されるLargo、Allegroの2度下降の動機の提示、Adagioでターンを伴った半終止、とわずか6小節間でめまぐるしい変化が起こるこの楽章冒頭はきわめて印象的である。ふたたびLargoにテンポを落とし、平行長調のヘ長調で確保(第7小節~)されると、今度は分散和音と8分3連音符の分散和音を伴奏とする、ダクテュルス・リズムの分散和音上行とターン音型の反行形が拡大された主題(第21小節~)があらわれる。つまり、これら2つの主要主題は共通の要素の異なる表出なのである。こちらの主題も、やはりヘ長調で確保(第29小節~)され、推移(第41小節~)を経て属調(イ短調)で副次主題(第55小節~)が提示される。

低音域で主和音の第1転回形より開始される副次主題は、その旋律線がターン音型の拡大によっており、ここにも主要主題との密な関連が見て取れる。第2拍目がsfで強調されるのも、2つ目の主要主題の確保におけるリズム的特徴に由来している。

(展開部+再現部)

冒頭と同じくLargoで開始される展開部(第93小節~)は、まず分散和音上行で調性を探る。まずト短調の属和音を匂わせるが、すぐに嬰ロ音上の減7和音へ向かい、嬰ヘ長調の主和音第2転回形に至る。これを半ば裏切る形で、調性は嬰ヘ短調へ向かい、Allegroとなって2つ目の主要主題が展開される。副次主題の和音がばらされた形であらわれ(第122小節~)、再現部(第142小節~)をむかえる。

Largoはレチタティーヴォ風の単旋律の挿入によって拡大され、2つ目の主要主題はその原型をとどめず、カデンツァ風の分散和音へ変容してほとんど推移の一部分に様変わりする。副次主題を主調で再現し、そのまま沈み込むように楽章を閉じる。

執筆者: 岡田 安樹浩

演奏のヒント : 大井 和郎 (1752 文字)

更新日:2019年12月20日
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ベートーヴェンの代表的なソナタの1つです。この辺りからの作品は、2楽章も、3楽章も(終楽章も)、大切な楽章として、各楽章の流れがプログラム的になっています。この1楽章も、ベートーヴェンの強いエネルギーを充分感じさせる楽章です。しかしながら技術は大変難しく、左手のトレモロができるかできないかで、仕上がりが変わってきます。26小節目や30小節目等の左手のトレモロがどれだけ速く正確に弾けるか試してみましょう。もちろん、これらのトレモロが、練習次第で弾けるようになることも充分にあります。そして、これらの3連符の速度が全体のテンポを決定します。あまりにもテンポが遅すぎても、曲のイメージが崩れてしまいますので、ある程度のテンポが要求されることになり、つまりは3連符を速く弾ける技術が必要となります。

1-2小節間

ラルゴとは、幅を広くという意味があります。ペダルを踏み、音がいつまでも鳴り続けているのをゆっくりと聴くようにします。残響を聴くように、ハーモニーを聴き続けます。

2ー5小節間

右手8分音符の連符はアーティキュレートされていますね。ヴァイオリンのボーイングを連想してみて下さい。そして、その場合、2つの8分音符の1つ目の音が非和声音、2つ目の音が解決音になっていますので、2つ目の音は1つ目の音より小さく弾きます。手のモーションとしては、2つ目の音を弾いた瞬間に指が伴盤から上に離れるようにします。つまり、下ー上、下ー上のモーションの連続です。

彼がクレシェンドを要求しているのは4小節目の終わりからですね。ですのでここまでpで弾いて、クレシェンドと書かれている位置からクレシェンドします。その前はしないようにします。

8ー13小節間

2ー5小節間と比べ、あきらかにテンションは上がります。休符も左手に入ってきますし、11ー12小節間、強拍の位置に休符が入ってきますね。agitatoの雰囲気で、テンションは一気に上がります。そして13小節目のフォルテに達します。

21ー28小節間

4小節単位で2つに分けて考え、1つ目よりも2つ目の方を大きく弾きます。各フレーズ、最初の1小節にはスタッカートがありますので、ここはペダルを入れません(1拍目は入れてもかまいません)。残りの3小節は、左右ともにレガートにするためにペダルを入れます。

29ー41小節間

29小節目で、28小節目から来たフォルテを一度pに落とします。落とさないと行き所がなくなるからです。一度pに落としてから、41小節目を目指してテンションを上げていきますので、最初からあまり大きな音で弾かず、41小節目のためにフォルテを節約しておきます。

79ー80小節間

難所の1つです。左手上声部2声と、バスの声部、双方とも切れないように、かつ、ペダルが濁らないようにします。以降、83ー86小節間も同じです。

93ー98小節間

6小節間に3つのユニットがあると考えます。各ユニット、和声も異なりますので、同じppでも変化を付けます。また細かいアルペジオの音符の速度も各ユニット毎に変えることで、カラーが変わります。

133ー136小節間

9割の学習者がカウントを怠る箇所です。それまでの小節と同じように、2拍子をきちんと数えます。全音符だからといってフェルマータ的に弾いてはいけません。全音符であろうと指揮者がカウントしています。

143ー148小節間

この6小節間、ペダルを踏みっぱなしにする奏者の方が恐らく多いと思います。実際そのようにペダルマーキングが書かれています。しかしこれはあくまでベートーヴェンの時代のピアノに合わせて付けられたマーキングです。これを我々が現在使用しているピアノで同じ事を行えば、激しい濁りが生じます。筆者であれば、ある程度濁ってきた時点でペダルを変えますが、ここは主観的な話になりますので、ご自身の判断にお任せします。155ー158小節間も同じです。

219ー224小節間

先ほどの、143ー148小節間の問題と同じ問題です。この6小節間、ペダルを踏みっぱなしにするマーキングが書かれていますが、本当にそうしてしまうと、何の音が鳴っているのかさえも解らなくなるほど混濁しますし、ppが出なくなります。ここは極力ペダルを減らすか、無くすか、して下さい。

執筆者: 大井 和郎

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