田園的な平和なイメージを持つ第1楽章です。最初のソナタから約3年が経過してこのソナタが書かれましたが、弦楽器のアンサンブルを思い起こさせる書法が随所に見られます。これらのアーティキュレーションはできる限り守りましょう。
さてこのソナタの第1楽章ですが、ペダルが重要なポイントになりますのでそれをお話ししたいと思います。基本的には、スケールが来るところにペダルは入れないようにします。濁りが生ずるからです。アルペジオ部分で、たとえ濁りが生じない部分でも、声部の独立をハッキリと聴かせるためには、むやみに踏みっぱなしにしない方が良いでしょう。
冒頭から説明します。1小節目ご覧下さい。左手の音はバスから第3音、第5音とタイで伸ばされていますね。ベートーヴェンはこのバス音を伸ばす事で、暖かみや安心感を出したかったのかも知れません。この小節内でペダルの濁りが生じないところは、この、1拍目裏拍の付点8分音符Gから、次の右手の音D2つまでです。最後のAisは例え踏みっぱなしでも、鳴るのは一瞬で、次の小節ではペダルを離すことを考えれば、そう神経質になる事もないのですが、ペダルは、左手の、GHDのみ入れます。そして右手旋律のDが来たらペダルを離します。勿論、左手は2拍目で4分音符ですから、これは指を伴盤の上に乗せておいて、音を伸ばします。
ペダルを2拍目まで踏みっぱなしにしない理由は、右手の旋律である、2拍目裏拍のメロディD-D-Ais が、単旋律であることを聴かせるためです。踏みっぱなしにしてしまうと、メロディーラインとその他の音が混同して聞こえてしまうからです。
左手はもともとタイがかかっているので、ペダルなど必要ないのではと思ってしまうのですが、ペダルを入れないと、今度は右手のラインが切れたり、左手の和音に暖かみが出なかったりと、なかなか都合が悪いことが起こりますので、一瞬ですが、ペダルを入れると良いと思います。
5ー7小節間、声部の独立を聴かせるため、ペダルは一切入れません。
8ー24小節間、左手に分散和音が来ますね。これは、勿論バスの音がどうしても16分音符分の音価しか与えてはならないという厳しい決まりがあるわけではありません。アンサンブルで考えて、バスと、その他の音は別々の楽器と考えます。故に、
1 左手の5の指で、バスを次のバスまで伸ばしておきます。こうすることで、例えば、13小節目でスタッカートが来たり、15小節目1拍目で、G-Fisと、ペダルを入れれば必ず濁りが生じる部分において、ペダルを離したとしても、バスは鳴り続けてくれます。
2 ペダルを一拍毎に入れます。ただし、休符、スタッカートは守り、濁りが生じる装飾音(9、15、17小節など)がある小節は濁りが生じないようにして下さい。同様に、15小節目1拍目のメロディー音G-Fisなど、ペダルを踏みっぱなしにすると濁りが生じる箇所はペダルを抜くなりして濁りを避けます。
24ー32小節間、ペダルは一切入れません。全て、指でレガートやアーティキュレーションを処理します。
33ー40小節間、ペダルを1拍につき2回入れます(半拍毎に)。
41ー43小節間、ペダルは一切入れません。
44小節目、1拍毎にペダルを入れます。
45小節目、ペダルは一切入れません。
46小節目、1拍毎にペダルを入れます。
47ー51小節間、半拍毎にペダルを入れます。
52小節目、ペダル無しです。
53小節目、半拍毎にペダルを入れます。
54ー57、同様にします。
58ー62、ペダルを入れます。
展開部、63ー67まで、冒頭と同じペダルを入れます。
68ー80小節間、ペダルは一切入れません。
81ー83小節間、左手Asが伸びているところのみ、ペダルを入れます。
84ー85小節間、ペダルは一切入れません。
以降、同様なペダルを入れ、97小節目、半拍毎のペダルを入れで、98小節目のゴールに達します。
ご参考まで。