作品概要
出版年 1932年
初出版社 R. Deiss
楽器構成 ピアノソロ
総演奏時間 約10分(各曲3~4分)
1931年のポルトガル滞在の印象に基づき、翌年に書き上げられた。このころからミヨーの作品には独特の風格と安定感がそなわり始める。秋の訪れの早いヨーロッパらしいメランコリーを綴った〈九月〉、リスボン旧市街の盛り場のにぎわいを活写する〈アルファマ〉、酒場の流しの大衆歌謡ファドをノスタルジックなスローモーションに仕立てた〈別れ〉の3曲よりなる。マルセル・メイエ(Marcelle Meyer)に献呈され、1932年6月のメイエのリサイタルで初演された。メイエは「六人組」時代からの盟友で、ミヨーの作品に欠かせないピアニストの一人であった。本作以降もミヨーとの良好な関係は続き、1937年には《スカラムーシュ》(Op. 165b)の委嘱者、初演者となった。〈アルファマ〉は、メイエの師匠マルグリット・ロンが歴史的録音(1935年)を残している。
名手メイエを念頭に書かれているだけに、本作は華やかな技巧に彩られている。ことに「アルファマ」はきびきびとした進行が小気味よく、コンチェルトのカデンツァを思わせるような即興性にも富んで特異な効果を上げる。ミヨーは後年(1951年)、クロード・ロスタン(Claude Rostand)との対話の中で、《スカラムーシュ》の人気は喜ばしいとしながらも、具体的に《春》と《秋》を挙げ、これらが弾かれないことを残念がる発言をしている。《秋》はコンパクトな組曲として取り回しがよく、聴き栄えもするから練習しがいがあるうえ、弾けば泉下の作曲者にも歓迎される作品といえそうだ。
第1曲 Septembre 九月。Allant(活発に)。4分の4拍子。1932年3月 Villeflix にて完成。
第2曲 Alfama アルファマ。Vif et Gai(速く陽気に)。4分の4拍子。完成日記載なし。
第3曲 Adieu 別れ。Lent(遅く)。4分の4拍子。1932年4月1日 パリにて完成。