作品概要
出版年 1920年
初出版社 Sirène (のちMax Eschig)
楽器構成 ピアノソロ
総演奏時間 約6分(各曲 1分半~3分)
3曲ずつの2集よりなる《春》は、ミヨー初期の代表的なピアノ曲である。作曲年代はブラジル滞在の前後にまたがり、ミヨーが創作姿勢を確立した時期に重なる。透明感のある簡潔な書法と多調の使用は、そのまま「六人組」時代のミヨーが作風の軸としたものである。ミヨーの生涯の友人であった評論家ポール・コレールは、本作品の若さ、新鮮さ、率直さをメンデルスゾーンの無言歌を引きあいに出して論じているし、ミヨーの評伝作家ジャン・ロワは、光と緑の織りなすこまやかな陰影、日常のささやかな情緒のゆらめきを感じとりながらも印象主義的な描写性を強く否定している。
初演は、1920年(日付不詳)、パリの Matinée Dada 演奏会にてマルセル・メイエ(Marcelle Meyer, 1897-1958)によりおこなわれた。若くしてすでに高い声望を得ていたメイエは同世代の六人組のメンバーと親しく、六人組の全盛期には精力的な演奏によりスポークスパーソン的な役割を担った。ミヨー自身も本作品を好み、SP盤(1930年)に演奏を吹き込んでいる(第1, 2, 4曲)。ジャック・フェヴリエ、クリスチャン・イヴァルディ、ウィリアム・ボルコムら往年の名手たちがそれぞれに好演奏を残していることも特筆される。
第1曲 Modéré (中庸に) 8分の6拍子。1915年6月1日、パリにて完成。Jeanne Herscher-Clément (作曲家・ピアニスト)への献呈。
第2曲 Souple (しなやかに) 8分の12拍子。1917年9月18日、リオデジャネイロにて完成。Nininha Velloso-Guerra (ピアニスト)への献呈。
第3曲 Doucement(甘く) 8分の6拍子。1919年1月1日、ポワンタピートル(仏領グアドループ島)にて完成。Nininha Velloso-Guerra(ピアニスト)への献呈。